釘さん日記

中小企業と大企業の格差を見た日

事務所のレイアウト変更工事に便乗して、自分の机の上においてある資料の整理を行なった。

整理といってもたいしたことをやったわけではない。

うずたかく積み上げられていた資料で要らないものを捨てたり、あとで読もうと思っていたDMを開封して捨てる、という単純な作業だ。

その未開封のDMのなかに、財務省関東財務局の資料があった。昨年の暮れころ送られてきていたのだが、気にも留めずにいた。

開けてみると、中には40ページほどの安っぽい(簡易コピーの)冊子が一部入っていた。

タイトルは【法人企業統計年報要覧】

思い出した。そういえば昨年の夏、調査に協力していた。パフの細かな財務内容などを回答したのだった。

この統計要覧は、その調査協力のお礼として送られてきたもの。全国に約247万社ある法人企業から何万社かを抽出・調査し、統計処理・分析をおこなった要覧である。

何気なくパラパラめくってみた。

何の主観も入らない、単純な数字とグラフの羅列である。

売上高」「経常利益」「売上高経常利益率」「設備投資額」「外部資金調達額」「自己資本比率」「手元流動性」「労働生産性」「労働装備率」などなどの数字が、ただ淡々と掲載されている。

興味深かったのは、資本金1億円未満の中小企業層と、資本金1億円以上の大企業層を並べ、比較しやすいように載せてあったこと。

読むうちにどんどん引き込まれていった。単純な数字の羅列のはずが、その数字には大きな意味があった。読んでいて愕然としたのである。

大企業と中小企業の格差が、とてつもなく大きく開いていることがよく分かったからだ。

日本の法人企業の98.8%は中小企業である。この中小企業で働く従業員数は、全体の70.6%を占めている。100人のうち70人は、中小企業ではたらく人々である。

しかし、この国の労働政策や産業政策は、どちらかというと大企業に有利なように設計されている(ように思える)。大企業は税金をたくさん納めているわけだから、政治への発言力が大きくてもやむを得ない。経済団体の会長さんの発言に重みがあるのもわかる。

しかし、彼らに擦り寄るような政策になってしまっては困る。100人のうち70人を見捨てて、30人だけを救うような政策になってしまっては困るのである。

中小企業は、厳しい環境のなかで、必死に頑張っている。景気が回復したといわれている近年の全産業の売上高と経常利益。大企業は確かに、4年連続の増収増益である。しかし、中小企業の平成18年度の経常利益は、前年を下回っている。

労働生産性(付加価値額/従業員数)を見ると、中小企業は、大企業の半分以下で、その格差は、年々広がる一方だ。しかし、大企業の下請け中小企業への締め付け(発注価格の値引き要求)は、どんどん厳しくなっている

こりゃ、いかん。

日本を支えているのは中小企業なのである。中小企業で働く従業員たちの血のにじむような努力と汗によって、大企業の利益が生み出されているのだ。日本国の税金の多くも、中小企業の従業員たちの納税によるものである。

その従業員は決して少数派ではない。全体の7割以上を占めているのである。この7割の人々が幸せにならないでどうする!?

この一冊の薄っぺらい統計冊子を読んでいて思わず怒りがこみ上げてきた、日曜日の昼下がりなのであった。

 

#きょうは珍しく、釘さん、まじめで硬派やなあ……。

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