僕の行きつけの床屋は、港区三田にある。会社(パフ)を立ちあげる前から通っているので、もう10年以上になる。この床屋のオヤジさん(60代半ばくらいかな)は、ちょっとした芸術家でもある。油絵や水彩画を書いては展覧会に出品し、上野の美術館にもよく飾られたりしている。
このオヤジさん、朝の出勤途中でも、スケッチブックを自転車の荷台に括りつけて都内を散策し、目にとまった風景をささっとスケッチしているらしい。
きょう頭を刈ってもらいながら、 「いやあ、きょうはいい天気だよねぇ。クギサキさん、赤坂サカスもういった?きっと桜もまだ咲いてると思うし、行ってみなよ。歩いて行くのも、きょうなんかは気持ちよくていいかもよ」と言われ、その気になった。
床屋を出たのが12時過ぎ。それからまるまる3時間、三田、赤羽橋、東麻布、飯倉、神谷町、六本木、赤坂を徒歩で歩き回った。
さて、これらの写真を見て、何かを感じないだろうか……。
東麻布から神谷町に向かうところに、大手ディベロッパーに地上げされた古い民家やアパートがたくさんあった。
「立入厳禁。巡回警備実施中」 という看板が、玄関に貼られており、周辺は草ぼうぼうで、猫が寂しく佇んでいた。
もうすぐ壊される運命の古い建物群。再開発によって賑わいを見せる街。東京のウラとオモテ、新・旧の顔だ。
港区三田から赤坂まで。ぶらぶらと時代の空気を感じながら歩いた休日の昼下がりであった。