以前から読もうと思って読めていなかった小説、『坂の上の雲』。ご存じ司馬遼太郎の長編歴史小説である。
読もうと思ったきっかけは、昨年の6月、出張で松山に行った時のこと。空港に向かうために乗ったタクシーの運転手さんに、坂の上の雲ミュージアムや、秋山兄弟の生家に連れて行っていただいた。運転手さんは郷土が生んだこの英雄たちを誇らしく語っていた。
松山は、明治維新では幕府軍側にいたため、その敗北によって、すぐお隣の土佐や長州に支配される立場となった。しかし、坂の上の雲の主人公たち(秋山兄弟と正岡子規)の活躍によって、郷土の人々はのちに、胸のすく思いをしたのではないだろうか。
NHKがスペシャルドラマとして、2009年秋から3年がかりで放送するという。かつてないスケールだ。すでに撮影がスタートしており、先日、ロケの模様がテレビで放映されていた。そのロケの壮大さに関心を持ったことも、読んでみようと思ったきっかけだ。
この小説は、産経新聞に1968年から1972年にかけて4年半にわたり連載された。構想期間も含めると10年間ほどの歳月をかけたという。司馬遼太郎は、40代のほぼすべてを費やして、この小説に取り組んだというのだ。
司馬遼太郎の小説といえば、『竜馬がゆく』や『翔ぶがごとく』や『燃えよ剣』など、幕末~明治維新のものを僕は好んで読んでいたのだが、この『坂の上の雲』は、列強の仲間入りを果たそうともがいていた明治初期から、不幸な日中戦争や太平洋戦争のきっかけとなる日露戦争までの時代を描いている。
司馬ファンからは圧倒的な支持を得ているこの作品。いまさらながら、やっと読み始める。
10月中旬に再度、松山に出張する予定があるので、それまでになんとか読破し、もう一度、秋山兄弟や正岡子規の足跡を辿ってみたいと思う。