最近、たどたどしい喋りの、新入社員(あるいは学生)と思われる人からの電話には、努めて出るようにしている。また、自分に時間の余裕があるときには、できるだけじっくり会話をするようにしている。
昨日の日記でも書いたように、我がパフでもインターンの学生が、たどたどしくも懸命に営業電話や飛び込み訪問を行っている。その姿を見ていると、ヘタな営業電話がどうも他人事とは思えず、ついつい親心が生じてしまうのだ。
一昨日、パフと同じように、内定者であるにもかかわらず、営業として働いている学生からの電話があった。そりゃあもう、ひどい電話である。何を言っているのかさっぱりわからない。
ためしに、「キミは、働きはじめてどのくらいになるの?」と聞いてみた。
「は、はい。実は昨日から働き始めたばかりで……」
どうりで。
「じゃ、もう少し練習して、もう一回かけなおしておいで。きょうの電話よりも上手くなってたら、会うかもしれないよ。じゃね。がんばってね」
といって電話を切った。
すると昨日また、その彼から電話がかかってきた。しかし、残念ながら、判で押したようなマニュアルっぽい喋りだった。
「あのさあ……。昨日電話くれたのはキミでしょ?なぜ、僕に初めて電話をかけるような、そんなよそよそしい、イチからのセリフなの?」
彼は答えた。
「は、はい。自分が少しでも電話がうまくなったところをお聞かせしたいと思って、昨日と同じことをイチから繰り返しました」。
そっかあ…。まあ、そういう一生懸命さがあってもいいかな。では会ってみよか、と思った。
しかし、実は彼が営業しようと思っている商品には、僕はほとんど興味がない。なので、会ってもいいのだけれど、彼の会社のビジネスには結びつかない可能性が高い。
そのことを正直に彼に伝え、「それでも差し支えなければ30分くらいなら会ってもいいよ」と伝えた。
念押しのために、「でもね、買う気のない会社に訪問するわけだから、上の人に相談したほうがいいよ。それでも上の人が行ってこいっていうならおいで」と伝えた。
すると、少し躊躇したあとに、「だ、大丈夫です。い、行きます……」と、ちょっと自信なさげに彼は答えた。
あれれ、大丈夫かな。ちょっといじり過ぎたかな。
さて。彼は果たして、僕のところに来るだろうか。
そもそも新人が評価されるポイントは、「一生懸命であるかどうか」「逃げないかどうか」「言い訳しないかどうか」「素直であるかどうか」という点だけである。それが伝われば、どんなに立場が上の人間であっても、きちんと向き合ってくれるものだ。いや、立場が上の人間であればあるほど、向き合ってくれるものだ。また、営業なんて、会って話をしない限りは絶対先には進まない。しかも、営業の仕事は、断られてからが本当の勝負なのだ。
彼が逃げずに来てくれることを楽しみに待ちたい。