釘さん日記

『人を育てる』を書く日

日経新聞朝刊の最終面(文化面)に、『交遊抄(こうゆうしょう)』というコラムが連載されている。

毎回、各界の著名人が登場し、自分のこれまでの人生のなかでの、忘れ得ぬ人との出会いや交流の話を語る企画だ。

昨日のコラムの語り部は、リクルートエージェント社長の村井満さん。いまから26年前の、新入社員時代のお客様の話を書いていた。

僕はこのコラムを、嬉しく、懐かしい気持ちで読んだ。

なぜかっていうと、僕は26年前、この村井さんと一緒に仕事をしていたからだ。

舞台は、日本リクルートセンター(現リクルート)の神田営業所。所長は当時30歳ちょっと。他のメンバーたちは皆、20代の若い連中ばかりだった。

このコラムに登場する、秋葉原の(当時は)小さな会社(栄電子)のこともよく覚えている。営業所内で、毎日のように話題に上っていた会社だった。

村井さんは新入社員でありながら、この会社の営業担当者として、あらゆる課題に取り組んでいた。昔のリクルートは、単なる『媒体売り』の営業ではなく、お客様に必要であると判断すれば、どんなものを提供しても良かった。ホントの意味で、お客様と並走するパートナーだったのだ。

当時、中小企業が優秀な大学生を採用するのは極めて難しいことだったのだが、我が神田営業所のお客様は、ほとんどが中小企業。皆、知恵を絞りながら、お客様の採用成功に向けて、懸命に取り組んでいた。お客様と一心同体になりながら汗をかいていた。涙も流していた。

だから26年経ったいまでも、当時のことは忘れない。

僕らは、お客様のことを、人の採用を通じて育てていたつもりだったのだが、育てられていたのは、実は僕たちのほうだった。

お客様に傾ける愛。お客様から頂戴する愛。このふたつの愛が、人と会社を育ててくれたのだと思う。

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