釘さん日記

父の血を引いた息子を観た日

ジーパン刑事といえば、僕らの世代が好んで観ていた刑事ドラマ『太陽にほえろ』に出演していた松田優作のこと。あの破天荒な演技と、「なんじゃこりゃー!」の台詞で有名な殉職シーンは、36年経った今でも、僕らの記憶に、しっかりと残っている。

その後も数々のテレビや映画に出演し、器(スケール)の大きさと、スタントマンを使わない豪快なアクションやコミカルな演技で、多くのファンを魅了した。まちがいなく1970年代中盤から1980年代にかけてのカリスマ俳優だった。

しかし、1989年、癌に侵されていた松田優作は40歳という若さで他界する。松田優作の名前を世界に轟かせたハリウッド映画『ブラックレイン』の撮影中には、すでに病状が進行しており、激しい苦痛と闘いながらの演技だったという。完成後の映画を観たが、癌に侵されていたとは思えない、(いや、だからこそかもしれないが)鬼気迫る秀逸な演技だった。

本当に惜しい俳優を亡くしたと、当時、残念に思ったものだ。

その松田優作が亡くなって、早20年となる。

しかし、いまもなお松田優作は姿を変えて活躍している。

松田優作のDNAを受け継いだ俳優、松田龍平のことである。

きょうは偶然にも、松田龍平の演技を、一日に二回、映画とテレビでそれぞれ観た。

映画は『劔岳 点の記』 、テレビは『天地人』である。

『劔岳 点の記』では、血気盛んで、人間的に未熟な若い測量隊員を演じていた。『天地人』では、御存じ冷酷無比な伊達政宗を演じていた。

ともに父親譲りの、個性溢れる演技だった。あの目、あの表情、あの雰囲気は、まさにお父さんの血を引いたものだ。

特に『剱岳 点の記』では、松田優作のことを尊敬してやまなかったという仲村トオルとの共演が興味深かった。映画のラストシーンでの二人の手旗信号での交流。これは見モノである。原作にはないシーンとのことなので、(これは僕の推測だが)二人のことを知る映画制作者が仕組んだ演出だったんじゃないかなと思った。

松田龍平の弟、松田翔太も、まだ若いながらも、兄貴に負けずとも劣らず、独特の世界をもった、将来が楽しみな俳優だ。父親が早世したからこそ、この二人は、役者としての自立や自覚が高まっているのかもしれない。

親から子へ。世代はゆるやかに、しかし確実に受け継がれている。

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