釘さん日記

就職人気企業ランキングのことを書く日

昨日(1月14日)の朝日新聞で、「みんなの就職活動日記」が就職活動を行っている学生からデータを収集してまとめた「就職人気企業ランキング」を発表していた。

僕は、この「就職人気企業ランキング」の存在に異を唱えるもののひとりだ。

その理由はただひとつ。

学生を惑わす(勘違いさせる)元凶となっている」からである。

発表されたランキングデータだけでなく、企業がこのランキングを上げるために、「本質をはずした採用活動をおこなっていること」も学生を惑わすことに繋がっている。この裏側では、「ランキングを上げる」ということだけを目的とした採用関連業者(○○ナビのような就職情報事業者や採用コンサルタントの類)の姑息ともいえる提案活動が、企業を悪の道に誘ってしまっている(ランキングデータは操作可能なのである)。

こんなくだらないもの、やめちまえ!

と、毎年各社からランキングが発表されるたびに、僕は腹を立てている。

腹を立てるんだったら見なければいいわけだが、仕事柄そういうわけにはいかない。必ずチェックしている(苦笑)。

で、話は昨日朝日新聞で発表されたランキングである。

ランキングデータは、「やっぱり学生だね。こんなもんかねぇ」というものだった。

しかし、解説文には、激しく共感するものがたくさんあった。「うん、そう。その通り!」という感じだ。

実はこの解説文を執筆している人のことを僕はよく知っている。採用プロドットコムの寺澤社長だ。

寺澤社長は、とある大手就職情報会社の役員だったのだが、数年前(2年半前だったかな?)に独立し、同社を起業された。同社は、採用を行う企業に対して情報を提供するビジネスを行っているのだが、就職情報会社とちがって、採用を行う企業からお金をもらうビジネスモデルではない。だから企業におもねった発言をする必要がない。見方が公平であり公正なのだ。

寺澤さんは、このランキングからみてとれる学生の意識の脆弱さや知識の浅さに危惧を覚え、次のような指摘を行っている。

(日本を支える実力派企業の評価が低いことを受けて) 「景気変動により文系学生の人気が低下したことが主な原因だが、あまりに短絡的ではないか・・・(中略)・・・学生のさらなる業界研究を期待したい。」

(ランキング上位の顔ぶれを見て) 「上位に並ぶ企業はすべてエンターテインメント系。製品・サービスが面白いことと仕事が面白いことは別だと考えるべきなのだが・・・(中略)・・・学生にとって仕事が面白いこととスキルが身につくことは逆のイメージであるようだ。」

(OB訪問の回数を問う調査で、訪問ゼロの学生が全体の8割。3社以上となるとたったの6%という結果を見て) 「いかに多くの社員に接触できたかで就職の成否は決まるといってよく、学生の力の入れどころが間違っているとしかいいようがない。実際に働いている人の本音を聞かずして真の志望理由などいえるはずもない。」

そして解説文の最後を、寺澤社長はこう結んでいる。

「焦るあまり、軸もないままに『どこでもいいから内定がほしい』と手当たり次第受けまくると厳しい結果に陥ることは間違いない。悠々として急ぐ、という心境で就職活動を進めてほしい。」

さすが寺澤さん。こういう解説文(客観的な目で見た批評)がきちんとついている「人気企業ランキング」であるならば、僕も否定するつもりはない。

結局僕が恐れているのは、「人気企業ランキング」によって、学生の勘違いを増幅させることであり、姑息な就職情報事業者の提案が大手を振ってまかり通ることであり、採用担当者が採用の本質を見失うことなのである。

それらが、少しでもなくなるような形で活用されるのであるならば、就職人気企業ランキングも(いわば反面教師として)役立つのかもしれない。

モバイルバージョンを終了