きょうの日記は、珍しく真面目なことを書こうと思う。
しかも、「某大手就職情報会社」とか「某R社」といった暈(ぼか)した呼び名ではなく、実名で「リクルート」という社名を使う。リクルートの社員たちに、出来る限りの愛情を込めて書こうと思う。
厳しいことも書くが、業界の将来のことを考えたうえでの苦言である。どうか許してほしい。
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リクルートは今年で創業50周年を迎えた。奇しくも僕と同い年だ。
創業以来、企業の新規学卒者採用と学生の就職活動に多大なる貢献をしてきた同社に、尊敬の念を込めてお祝いの言葉を贈りたい。本当におめでとうございます。
同社のことを尊敬するのは、就職や採用を大きなビジネス市場として創造し、育ててきた功績に対してだけではない。
この50年間、一般の企業では考えもしなかった(考えたとしても勇気がなくて実行できなかった)ような、奇想天外な事業や組織や仕組みを、これでもか!というくらい生み出してきたこと。同時に、その事業や組織を通じて、普通の企業に勤めていたら凡人(あるいは変人や奇人)で終わっていたであろう人材を、世の中に有為な人財として輩出してきたことに対してだ。
僕も、このリクルートに、かつてお世話になった人間のひとりである。
ただし僕の場合は、中途半端な年齢(22歳。大学4年生)で、中途半端な期間(一年弱)を、中途半端な立場(A職と呼ばれたアルバイト営業マン)として、働いていたので、有為な人財として輩出されたわけではなく、中途半端な人材として放出された、まさにハンパ者である。
おっと脱線しそうだ。元に戻す。
たった一年間ではあるが、リクルートで学んだことはたくさんあった。リクルートが縁で出会った大切な人たちは数限りない。また、リクルートでの一年間の経験がなかったとしたら、僕の人生はきっと平凡で退屈なものになっていたのではないかと思うし、パフという会社は絶対に生まれていなかった。それだけは断言できる。
そんなわけで(ハンパ者の僕ではあるのだが)、リクルートに対する尊敬の念や感謝の念は一般の方々よりも遥かに大きいのだ。
だからこそ、最近のリクルートの社員たちには、つくづくガッカリさせられる。
昨年の今ごろも憤慨して、こういう日記を書いた。(クリックするとリンクされます)⇒ ナビに頼らない(騙されない)ことが必要だと痛感した日
この日記を、就職ジャーナリスト(でいいのかな?)である常見陽平さん が自身のブログで取り上げてくださった ことがきっかけで、僕と常見さんが知り合い、「破壊と創造の採用会議」なるものを立ち上げたのは、リクルートにとっては皮肉な話であったろう。
余談だが、僕らが執筆したブログは、リクルート内部で(ごく一部の部署だったのかもしれないが)「要注意人物の要注意ブログ」として印刷され回覧されたらしい(苦笑)。
そして、昨年の夏の(2011年度新卒企画=リクナビなど新卒採用企画の)営業シーズンでは、さらにガッカリさせられることが起きた。
就職ナビではリクルートに追いつくほどに勢力を増してきた毎日コミュニケーションズ(マイコミ)の「マイナビ」との仁義なき戦い、いや、見苦しい戦いを演じてしまったのだ。
具体的に書くと、マイナビとぶつかった場合、際限のない値引き合戦を繰り返したのだ。
「自社の商品価値を損なうようなことをなぜするんだ?」と現場のマネジャーに問うたことがある。その返事にさらにガッカリさせられた。
「だって、あちら(マイナビ)が先に仕掛けてきたことですから……」
市場を創造し、業界をリードしてきた会社の営業マネジャーの発言として、最低最悪のものである。本当に嘆かわしい。
地方の同業者から聞いた話では、リクルートの直販部隊がマイナビと営業でぶつかった場合、「無料でのリクナビ提供」も認められていたそうだ。・・・終わっている。
いま就職情報誌業界は、かつてないほどの激震に揺れている。多くの同業者(特にリクナビやマイナビの代理店)は瀕死の状態で喘いでいる。
この業界の特異性として挙げられるのが、代理店が多数存在するにもかかわらず、直販(媒体社であるリクルートなど)の営業部隊も多数存在していることだ(テレビや新聞などのメディアでは、媒体社の営業マンは広告代理店をサポートするだけで、自分たちが直接広告主に売り込むことは稀だ)。
(リクルートやマイコミなどの)直販部隊は、値引き合戦を行ったとしても(情報メディアは利益率が極めて高い商品であるため)、全体でみれば赤字に陥ることはない(実際リクルートは、これだけ売り上げが落ち込んでいても、相変わらず高収益を維持している)。
しかし代理店はそうはいかない。仕入れ価格が定価の○○%と決められているので、値引き合戦にひとたび巻き込まれると、利益が出るどころか逆ザヤになってしまうのだ。それでも取引先を失いたくないので代理店は赤字を覚悟で値引きをする。結果として自ら会社に致命的な打撃を与え、悲しい末路を辿ってしまうのである。
リクルートは、この節操のない値引きによって、自らの価値を貶めたばかりか、(今までリクルートの媒体を販売し利益貢献してくれたはずの)同業者を崖っぷちに追いやってしまった。
「だって、不況で雇用環境が急激に悪化したわけですから。企業の値引き要請も半端じゃないですから……」と言い訳するのだろうか。
二番手、三番手の会社ならば、そういう言い訳も許せるかもしれない。そして、定価を改定するのならばまだ許せる。不況で苦しんでいるユーザー(採用を行う企業)にとっても、採用コストが安くなるのは喜ばしいことだし。
しかし、定価があってなきがごとしの値引き合戦は許せない。業界のリーダーたるリクルートは、決して行うべきことではなかった。
パフは幸い(大きな母集団を形成することだけを目的とした)自社媒体から撤退しているので(母集団が必要なお客様には、そのお客様にとって本当に必要なメディアを考え、選んで、提供することにしているので)、この節操の無い値引き合戦には巻き込まれずに済んだが、仲のいい同業者の恨み節を聞くたびに虚しさと怒りがこみ上げてくる。
実は、同様の愚を、リクルートはいまリクナビ以外の営業でも犯そうとしている。
これは、我々パフが、いままさに害を被りかけていることである。
長くなってしまうが、この際だから説明しよう。
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パフがいま多くの企業に提供している内定者向けのコミュニティシステム(PNCSという商品)を、リクルートも今週のアタマから正式に提供し始めた。つまり競合になったわけだ。
「え?なぜパフの商品をリクルートが売ったりするの?」と思われるかもしれない。
実はこの内定者向けのシステムというのは、商品名は異なるものの、パフが売っている商品と、リクルートが販売しようとする商品の開発元は同じで、まったく同じ仕様のシステムなのだ。
つまり我々(パフやリクルート)の自社開発品ではなく、開発元からのOEM商品なのである。
これを、我々の営業先に対して、節操のない値引きでリクルートが仕掛けてきたのだ。
「パフから買っても我々から買っても同じシステムですよ。だったら私たち(リクルート)から買ってください!」
「次年度のリクナビ(などの商品)から(通常の値引き額に加えてさらに)このシステム導入分の費用を割り引く。結果としてタダで提供するのでパフからは買わないで欲しい」
たまたまこの話を持ちかけられた企業の人事担当者が、こっそりパフの営業マンに教えてくれたことで発覚した。
さらにリクルートの営業マンは、事実とは異なること(つまりウソ)を人事担当者に伝え、商談を有利に運ぼうとしていたことも分かった(事情を知らない人には分かりにくいことなので説明しないが顧客に迎合した大ウソだ)。
ついに地に落ちたか、リクルートの営業マンよ……。
この話を聞き、怒りを覚えるというより悲しくなってしまった。本日、このような日記を書こうと思ったきっかけでもある。
この日記を読んでくれているリクルートの心ある社員たちに言いたいことがある。
業界のリーダーとしての責任や誇りを失ってはいけない。
キミたちが今すべきことは、節操のない値引き合戦をして、自らの商品価値を貶めることではない。商品を適正な価格で販売し、適正な利益をあげ、その利益を使ってこの商品をさらに磨きあげて、ユーザーを幸せにすることだ。
OEM商品とはいえども、リクルートのブランドで販売するキミたち自身の商品なのだ。
そして自社の商品には、誇りと同時に愛情を持たなければいけない。
僕たちパフは、このシステム(内定者コミュニティ)を今から10年前に自社開発し、当時は存在しなかった市場を創造してきたという自負がある。
開発費やシステム保守の負担を軽くするために、今でこそ開発会社からOEM供給を受けているが、このシステムには我々の長年の血と汗とノウハウがたっぷり詰め込まれている。
システムの仕様は、キミたちが販売するものと寸分たがわぬものかもしれないが、このシステムに込められた我々の想いは、キミたちの想像を遥かに超えるものがある。そして、我々のシステムを導入してくれた企業(利用者である内定者や社員)を十分満足させるだけの運用ノウハウを、我々は提供する自信がある。
もしキミたちがタダでこのシステムを企業に提供したとして、我々と同じ価値をキミたちは保証できるのか?
キミたちは業界のリーダーである。業界のリーダーには、リーダーとしての役目があるはずだ。
そのひとつは業界を健全な形に育てていくことだ。
強大な資本力を笠に、節操のない値引合戦を仕掛け、正直なビジネスを行っている同業社を潰すことがキミたちの仕事ではないはずだ。
もちろん、正々堂々とした戦いは歓迎する。値引きも場合によっては必要なこともあるだろう。
しかしこれは、倫理観や道徳観の問題である。姑息な手段や、ましてや営業トークを逸脱した「ウソ」はついてはならない。
キミたちの誇り高き先輩たちは、値引き販売を「恥ずかしい行為」として認めなかった。僕もリクルートで働いていたころは「値引きをするということは、自分たちの商品価値を自ら下げているということと同じで、実に愚かな行為である」と教えてもらった。その時はよく分からなかったが、自分で会社を興し、自社商品を持つようになって、そのことの大切さがよく分かるようになった。
とても長くなってしまったが最後にひとつだけ。
リクルートが創ってきた就職と採用の仕組みは、多くの学生や企業の役に立ってきた。リクルートのおかげで多くの人たちが幸せになった。
一方で、最近では少々行きすぎたのではないかという気がする。弊害を多く生んでしまったのではないだろうか。
ここらで、本気で学生と企業のために、いまの仕組みを変えてみないか?
キミたちには、お金も人材(知恵や営業力)も情報もある。いま欠けているのは志だけだ。
もういちど高い志を取り戻し、この業界を健全な状態に戻し、手前勝手ではない世のため人のためのビジネスを創ってみないか?
創業50周年の今年、ぜひ真剣に考えてほしい。
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本日の日記は以上です。
長文ならびに独善的な言葉づかいで不快になられた方もいらっしゃると思います。たいへん失礼しました。
しかしながら、ぜひ本日のこの日記を、多くのリクルートの社員・役員・関係各位にお読みいただければと思っています。そして、皆様のご意見を、ぜひともこの日記の下のコメント欄に書き込んでいただければと思います。