先週末、twitter上で、日本の雇用システム(慣習?)のひとつである「新卒一括採用」の是非を問う議論が展開されていた。
すべてに目を通せたわけではないのだが、このことを昨日の社会人向けメルマガ「Face to Face♪」の連載コラム「どげえするんか?」のなかで取り上げてみた。
今回は、僕自身の意見はあまり書いていないのだが、twitterという(まだ全体から見れば限られた)場所だけではなく、いろんなところで、いろんな立場の方々が真面目に考えるきっかけになればいいなと思って載せてみた。
パフの社会人向けメルマガ「Face to Face♪」は、パフの社員や僕が名刺交換した方々を中心に、数千名(いまはもう一万人近いのかな?)の方々に配信されている。読者層は、人事担当者、経営者、同業者、大学の教職員、一般社会人、投資家、クリエイターなどなど、多岐にわたる。
メルマガ配信後、さっそくとある若手社会人(かつてパフを使ってくれていた志高き若者。いま一年の半分を海外で暮らしている)から、個別に熱い感想をもらった。嬉しいことだ。
ということで、本日はそのコラムを、この「釘さん日記」にも転載することにしよう。
メルマガが配信されていない皆さんにも読んでいただけたらと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【01】釘崎の「どげえするんか?」
第42回 批判が続く日本の就職と採用。オレたちはどげえするんか?
———————————————————————-
パフ代表釘崎が、現在の採用市場、就職活動、世の中のあれこれについて、
日々感じることを徒然なるままにお届けします。
※「どげえするんか?」=大分弁で「どうするんだ? どうしたいんだ?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2010年の夏が真っ盛りです。異常ともいえる猛暑が、7月中旬以降続いてい
ます。
私たちの業界(企業の新卒者採用を、戦略立案や、メディアや、集客や、イ
ベントや、業務代行や、アセスメントや、システムの提供や、内定者教育や、
場合によっては採用担当者の教育などなど、いろんなことで支援している業
界)では、「いま」が営業活動の真っ盛り。
そう、「いま」です。
「いまは2010年。ということは、2011年の新卒者採用に向けての営業活動で
すか?」
と、この業界のことを知らない方から聞かれることがよくあります。
答えはもちろん「ノー」。
2010年夏に営業真っ盛りなのは、2012年春の新卒者採用に関わること。つま
り、2年も先の採用にまつわる営業を行っているのです。
でも、この時期に万一営業の成果があげられないと、丸々一年間「オマンマ
の食い上げ」という恐ろしい事態に陥ってしまいます。
だから我々の業界は、こぞってこの時期に、営業活動を集中させるのです。
☆☆☆
今朝、営業リーダーたちが集まって行うミーティングに顔を出したとき、少
し複雑な気持ちにさせられました。
「もう2012年採用の施策は、すべて決まってしまいました」
と相手先の企業から言われて、営業訪問を断られることが増えてきた、とい
う報告があがってきたのです。
「も、もうかよ……」
たしかに、インターンシップに名を借りた新卒採用戦線の幕開けが、この8
月からであることを考えると「もう決まってしまいました」というのは、あ
ながち断り文句ではなく、本当のことなのでしょう。
私が複雑な気持ちになったのは、営業機会がもう残り少なくなってしまった
ということに対してではありません(もちろんそれはそれでピンチなのです
が)。
この「もう決まってしまいました」の時期が、年々じわりじわりと早く、そ
して、短くなってきてしまっていることに対してです。
そしてその原因の大部分は、私たちの業界が長年にわたる競争の中で生み出
してきてしまった「自責」であるからです。
「早くしないと優秀な学生は逃げてしまいますよ」
「同業の○○社さんは、こういう企画のセミナーを実施して優秀層を早期か
ら囲い込むそうですよ。御社でもその前にぜひ」
という囁きをしている営業マンの姿が目に浮かぶようです。
☆☆☆
最近、識者(と言われている方々)の間からも、日本の新卒採用システムに
対する批判がよく聞かれるようになってきました。
その中でも「新卒一括採用」に関する議論が、先週末、ブログやTwitterの
なかで沸き起こっていました。
どうやらきっかけは、この記事からだったようです。
「大卒2割、就職も進学もせず…10万人突破」(2010年8月6日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100805-OYT1T01175.htm
この記事に対して、脳科学者の茂木健一郎さんがTwitterで13回連続でご自
身の意見をつぶやいていました(13連続ツイートの文字数は、もはや「つぶ
やき」の範疇を超えていますね)。
茂木さんは、13連続ツイートの締めくくりを、このようにまとめています。
『新卒一括採用で、他社に遅れると優秀な人材が確保できないと思ってい
る人事担当のみなさん。それは、おそらく幻想です。本当に優秀な人材
は、そんな決まり切ったレール以外のところにいます。そろそろ、御社
は、世に先駆けて新卒一括採用をやめてみませんか?』
※茂木健一郎さんのtwitterアカウントはこちら
⇒ http://twitter.com/kenichiromogi
そしてこの茂木さんの意見に対して、さまざまな方々が持論を展開されまし
た。私とも親交のある常見陽平さんは、ご自身のブログ「試みの水平線」で、
『就活や採活の茶番ぶり、新卒一括採用の問題や、それに付随する企業や
大学、学生、官庁などの問題は現場の最前線で誰よりも強く認識してい
るが、逆に「安易な新卒一括採用批判」が横行していることに危機感を
持っている。中央公論でも論じたが、それでは学生を結局救うことは出
来ないのではないかというのが私の問題意識だ。』
と論じています。
※全文はこちら
⇒ http://blog.livedoor.jp/yoheitsunemi/archives/51143679.html
また、『街場の教育論』などの著作でも有名な内田樹(うちだたつる)さん
は、ご自身のブログ「内田樹の研究室」で、
『現行の就活は、「優秀な人材の登用」よりもむしろ、日本の若者たちを
「組織的に不安にさせること」を結果として生み出していることを、企
業の人事担当者はもう少し自覚して欲しいと思う。』
『「支援すれば、大きく花咲く可能性」のある若者たちを「支援し、激励
し、国力の底上げをする」という事業に日本のエスタブリッシュメント
はさっぱり関心を示さない。』
『私はいまの雇用システムでは、「きわだって優秀な人間がそれにふさわ
しい格付けを得られない」ことよりも、「ふつうの子どもたちが絶えず
査定にさらされることによって組織的に壊されている」ことの危険の方
を重く見る。』
と論じています。
※全文はこちら
⇒ http://blog.tatsuru.com/2010/08/06_1028.php
他にも、企業の採用の現場におられる人事担当者の皆さん、人材業界(特に
就職情報事業者)の皆さん、当事者である学生の皆さんからの意見も多く見
られました。
☆☆☆
大学(教育者)の立場から、企業(人事)の立場から、就職・採用事業者の
立場から、学生の立場から、それぞれの主張や言い分の違いはあります。目
指す社会や前提条件が異なるのだから、いろんな意見があって当然です。
が、共通するのは、「やっぱりこのまんまじゃマズイよね」ということです。
そして大切なのは、
「じゃあどうすんのよ?」「誰がどこから変えていけばいいのよ?」
「あなたはどうすんのよ?」
ということだと思うのです。
私は長年この就職と採用の業界の中で仕事をしてきた人間として、日本の新
卒採用システムを、よりよいかたちに変えていく責任があると思っています。
冒頭に書いたように、日本の就職や採用を歪なものにしてきた責任は(すべ
てとは言いませんが)、私たちの業界にあると考えるからです。
そして、変えていくための手段として、かつてこのコラムでもくどいほど触
れてきましたが、問題意識を持った企業の経営者や人事担当者の皆さんと一
緒に、「職サークル」の輪を広げていきたいと思っています。
http://www.puff.co.jp/business/shoku_circle/
就職情報会社がかつての大きな力を失ったいま、変える力を一番有している
のは、企業の経営者と人事担当者の皆さんです。
1社1社の力は小さくても、たくさんの会社が集まることで、それがいつし
か大きなムーブメントとなります。
「職サークル」の輪を広げることで、誰が誰のせいにするのでもなく、
“すべての社会人が当たり前のように若者たちを見守り育てていく世の中”
を創っていけたらと考えているのです。
【今回のどげえするんか?】
今回のコラムは「お盆ウィーク」ということもあり、読者の数も少ないかも
しれんの。ちょっと前、Twitterでつぶやいた一言と、関連するブログを載
せちょこうか。
『新卒者採用が、若者を騙したり、若者の将来を失望させたりするものであっ
てはならない 』
あんたは、どげえ思う? どげえ考える? どげえするんか?