8月15日は、お盆であり終戦記念日である。
毎年この時期になると、テレビや新聞では戦争を題材とした特集が組まれる。
が、最近その分量が少し減っているような気がする。
データを調べたわけではないが(そんなデータあるのかな?)、戦後30年から40年を過ぎたあたりから、だんだんと少なくなってきたような気がする。
僕らの親の世代は皆、戦争を体験している。空襲にあった人たちも大勢いる。僕の父親などは、予科練に志願し、終戦がもう少し遅かったら、零戦に乗って米艦に突撃していたかもしれなかったという。もし父親が米艦に突撃していたら、僕がこの世に生まれることはなかった。
僕らが子供のころは、親や祖父祖母、親戚、友だちのお父さんやお母さんから、よく戦争の話を聞かされたものだ。
8月6日、9日、15日は小学校の登校日で、平和授業が行われていたりもした。
僕らは戦争を知らない世代ではあるものの、ある種のリアリティをもって戦争を感じることのできた最後の世代なのかもしれない。
しかし、いま世の中の第一線で活躍している社会人(30代~40代前半)にとっては、戦争はかなり遠い存在ではないかと思う。核家族化が進み、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんから、昔の話を聞くことも減っただろうし。
マスコミで働く第一線の人たちは30代~40代が中心だろう。それが戦争の特集が少なくなってきている理由だとすれば残念なことだし、危険なことだ。
戦争の悲惨さを、リアリティをもって語ることのできる人たちは皆、高齢である。終戦時に15歳だった人たちは、もう80歳である。いまのうちに、もっともっと取材して、映像にして、記録に残しておかなければならないのではないかと思う。
昨夜、TBSで、「歸國」という終戦ドラマスペシャルが放映されていた。脚本は倉本聡氏の書き下ろしである。
戦争末期、南の海で玉砕した幾万もの兵士たち。その兵士のうち、あるひとつの部隊が65年ぶりに帰国した。南の海にまだ漂う仲間たちに、現在の(豊かになったといわれている)日本の様子を報告するためだ。
日本のために死んでいった英霊たちの目には、いまの日本が本当に豊かになったと映ったのだろうか。
なかなか深く考えさせられる脚本だった。
「いまの日本人は“豊かさ”と“便利”とを勘違いしている」
「便利というのはカラダを動かさないことだ。汗をかかないことだ。楽をすることだ。そんなのは豊かさではない」
ビートたけしが演じた上等兵の台詞である(記憶で書いているので正確ではありません)。
ギクッとした。
戦後我々は、便利なモノやサービスを多数生み出してきた。確かに便利になった。でも、それと引き換えに、「豊かさ」を犠牲にしてきたのかもしれない。
クルマにしても、新幹線にしても、飛行機にしても、携帯にしても、パソコンにしても、インターネットにしても、便利で便利で、もう手放せない。
企業の採用や学生の就職だってそうだ。ナビや情報誌のおかげで、便利で便利で仕方がない。汗をかかずに楽ができる。
倉本聡氏は、ドラマのホームページで、次のように語っている。
「これは鎮魂のドラマであり、怒りと悲しみのドラマでもある。もう先のない僕らの世代が、一つの時代の小さな証人として遺しておかねばと思い、書き下ろしたものである」
倉本聡氏は現在75歳。
この世代より上の方々には、若い世代に残しておいていただかなければならないものがたくさんある。まだまだ老兵は去ってはいけないのだ。