釘さん日記

上海で必要なことは“勇気”なのであった(5)

土曜日は、朝から一ヶ月ぶりの床屋に行きスッキリ。そしてその後すぐに赤坂に移動。ささかみコンサートに向けての久々の練習だ。赤坂にあるスタジオを1時から4時まで借りていた。

まだ風邪が治りきっておらず、鼻声かつ痰のからんだ声しか出ず、ちょっと不完全燃焼。しかしながら選曲の素晴らしさに我ながら感動。これらの曲群なら、多少ギターや唄はヘタでも観客は喜んでくれるに違いない。

本日、日曜日は2週間ぶりの部屋の掃除。そして衣替え。半袖のワイシャツをしまって長袖のワイシャツを引っ張り出してきた。午後からは銀座、八重洲界隈に買い物に。やっぱり日本はいいな。なんたって日本語が通じるし、横断歩道を渡るときクルマが横から突っ込んでくることもない。平和な国だ。

さて、平和な国から一転して、勇気が必要な国。中国・上海の日記の続編を書こう。

・・・・・

上海2日目。

いよいよ待ちに待った上海万博の日である。

現地時間朝の6時。透き通るような快晴である。

 

40年前、小学校4年生だった僕が行きたくて、でも結局行くことのできなかった大阪万博。「江戸の敵を長崎で」というけれど、僕の場合は、「大阪の敵を上海で」っていうところだろうか(笑)。

腹が減っては戦は出来ぬ。

おごうさんとダイサクと僕は、ホテルのバイキングの朝食をしっかりと食べた。

 

品数がたくさんあって味もなかなかなのである。ダイサクもおごうさんも(よそ見してるけど)なかなか満足げだ。

 

満腹になったところで、いざ万博会場へ。

ホテルから万博会場へは、タクシーで30分足らず。超荒っぽい運転で、案外早く着いた。

あ、そうそう。

ガイドさんから教わった、「上海では勇気が大事」だという話。もともとは上海でのクルマとの付き合い方の心得として教えてもらったことなのである。

上海のクルマは、横断歩道であろうと、人が目の前にいようと、平気で突っ込んでくるのだ。自分が突っ込むことで、相手が逃げると思っている。そして、車線変更やクルマの追い越しもチャレンジャブルなのである。多少の隙間があるとすぐに突っ込んでくる。もちろん、それに対抗することもできる。しかし、対抗するためには「勇気」が必要なのだ。ちょっとでも弱気や隙を見せると、相手にそこを突かれる。横断歩道を渡っているとき、たとえクルマが突っ込んできても(信号が青ならば)怯んではいけない。勇気を出して立ち止まらず速度を緩めず渡れば勝てるのだ。だから、ガイドさんは、「上海では(ルールよりもマナーよりも)勇気が大事」だと教えてくれたのだ。

閑話休題。

万博の正門まで長い行列(というか人の団子のようなもの)が出来上がっていた。すごい人だかりなのだ。

 

入門にあたっては一人ひとりの持ち物検査や入念なボディチェックを行うため、どうしても混みあってしまうのだ。

この行列でも気を抜いてはいけない。

ちょっとでも前のひとと間を空けてしまうと、すぐに割り込まれてしまうのだ。

日本では行列の割り込みなどはまず起きないが、上海はちがう。ここでもやはり「ルールよりマナーより、勇気が大事」なのだ。

ただし、上海の人が偉いのは、たとえ割り込まれたとしても怒らないのである。割り込まれた方が悪い、ということのようなのだ。きっと、泥棒や詐欺なんかでも、盗まれた方が悪い、騙される方が悪い、という考え方もあるんだろうな。中国人との交渉は難しいとよく言われるが、なんとなく納得したりする。

そんなわけで、僕らも何組かに割り込みされてしまったが、あまり腹も立たなかった。

それより、こんな風景をみかけて思わず写真を撮ってしまった。

 

中国人の幼子のズボンはお尻が割れているのだ。用を足したいときに、いちいちズボンを脱ぐ必要が無い。オムツをする必要もない。なるほど。なかなか考えているな。

並ぶこと約1時間。やっと会場に入ることができた。

我々がまず目ざしたのは我が故郷のパビリオン、日本館である。日本館はその姿から別名、紫蚕館と名付けられていた。

 
なかなか味のある建物だ。

僕は、日本館の民間企業のスポンサーの某社よりあらかじめ優先入館券を頂戴していたため、並ぶことなく裏口(いや、スポンサー専用の入り口)から入場することができた。普通なら3時間半待ちだったという。偉大なり、スポンサー様。

VIP待遇と言うことで、応接室でお茶まで出してもらった。お茶を出してくれたのは、研修生の大学4年生。上海の大学に通って日本語を学んでいるのだという。日本語を勉強し始めてまだ3年だというのに、とても日本語が上手だった。僕が繰り出すオヤジギャグにも応えてくれていた。

 

それにしても日本館は素晴らしかった。故郷は遠きにありて想うもの。日本の良さは、外国に来てはじめてわかるものもたくさんあるんじゃないかな。

日本館での滞在、約60分。隅から隅までじっくりと見学させてもらった。

日本館を出た後は、マイナーな国を中心に巡った。

「万博も、就職の合同企業説明会も似たようなものだ。大手有名企業ではなく、名もない中小企業に掘り出し物があるんだ!」

などというヘンな理屈を、おごうさんやダイサクに唱えながら、北朝鮮、ウズベキスタン、イラン、カタール、ヨルダン、ツルクメニスタン、アフガニスタン、アラブ首長国連合などなどを回った。

途中、国の名前とは思えない、「天下一家」という看板を掲げた謎のパビリオンがあったのだが、これがまたなかなかの正体不明なパビリオンだった。どうやら上海市とシーメンスが合作で出展しているようだったが。「天下一家」という名前から、ラーメンか暴力団か新興宗教のようなイメージを持っていたが、どうやら映像技術を駆使した近未来を表現したかったようだな。

 

日も暮れて、ダイサクが、「やっぱり大国のアメリカくらい見ておきたい」と言いだした。

僕もやはりアメリカがどのようなものを出しているか興味深かったので、大手有名企業だけれども、ちょっとポリシーを曲げて見ることにした。

アメリカ館は、他の国の館(もちろん日本館も含めて)ずいぶん雰囲気が違った。スタッフからして、皆フランクなのだ。オープンなのだ。飾りがないのだ。笑いがあるのだ。うーん。自由の国アメリカを、そのまま地で行っている。

出し物も(ムービーが中心で手抜きといえば手抜きなのかもしれないが)とても感動的だった。

最初に、ヒラリー国務長官のスピーチだった。そして最後の最後は、オバマ大統領だった。ヒラリーもだが、オバマはダントツにカッコイイ。映像だけなのに、しかも英語なのに、ジーンときた。日本の総理大臣だったら、ああはならないだろう。もっとも日本の総理大臣では、いつ交代になるかわからないから、万博の映像に使われることはないだろう。

最後の最後に、中国館もやっぱり見ようということになったのだが、これは甘かった。中国館は、毎朝入場のときに整理券が配られており、それがないと入れないそうなのだ。それだけの大人気らしい。たしかに他を圧する建物の大きさとデザインだ。惜しいことをした。仕方ないので、建物の写真だけ載せておこう。

 

こんな感じで過ぎ去った上海万博の一日。ホテルに着いたら、すでに深夜零時近かった。

さて、明日はリクルートの上海事務所に視察の日。他にも、101階建ての森ビルや、オフィス街への散策なども行った。そして夜は……。

上海の3日目に乞うご期待!

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