中2の男子にとって母親の存在というのは鬱陶しいものである。特にうちの母親は、なにかと細かいことに口煩いタイプだったので、僕は「はいはい、はいはい」といって無視することが多かった。
しかし、家計を支えるために毎晩遅くまで働いて帰ってくる母を見て、心の中ではいつも感謝していた。
母の作ってくれる弁当はとてもおいしかった。特に母の作る玉子焼きと鶏のから揚げは絶品だった。
柔道の昇段試験の日、母が持たせてくれた弁当は特大で、から揚げが大量に入っていた。ニンニクが効いており、周囲にぷんぷん匂いを漂わせていたことをよく覚えている。
母にとって、僕の柔道着の洗濯は大仕事だった。毎週、土曜日の練習後に持ち帰って、日曜日の朝から母に洗濯してもらうのだが、血や汗やカビが染みこんだ分厚い柔道着には難儀していたようだ。洗濯機は使わずに桶でゴシゴシ手洗いしてくれていた。
昇段試験に落ちて、しょげ返っている僕のことを母がどのように慰めたのか、あるいは励ましたのか、残念ながらよく覚えていない。
が、日ごろ苦労しながら面倒を見てくれている母に対して、柔道を辞めるということを言い出せなかったのは事実だ。
ともあれ、柔道を続けることを決意した僕は、半年後の夏、再度、昇段試験にチャレンジしたのだった。
(本日は短め。次回は柔道物語の完結編です)