釘さん日記

32年前の上司に同行営業してもらった日

僕が実質的に社会人デビューしたのは1983年1月。当時まだ大学3年生だったのだが、客先にはその正体を隠しながら営業マンとしてのデビューを飾ったのだった。

いや、「飾った」なんてカッコいいものではない。

来る日も来る日も、朝から晩までテレアポ(TELクリともいう)。アポが取れるのはせいぜい100社に1社くらい。やっと取れたアポ先に営業訪問するも玉砕……ということを繰り返していた。

当然、まったく売れなかった。思いっきり鼻がへし折られ、自己嫌悪にも陥った。逃げ出したくもなった。

そんなダメダメだった営業マンを諦めずに温かく見守ってくれた(いや、結構きつく怒られていたかなw)のが、若杉さんという営業所長。

僕はこの若杉さんと、若杉さんが所長を務めていた日本リクルートセンター神田営業所のおかげで、ビジネスの基礎を学び、社会人としての考え方を身につけることができた。大切な人たちとの縁をいただくこともできた。若杉さん率いる神田営業所がなければ、僕がパフを設立することはなかったはずだ。

そんな若杉さんからつい先日、とあるお客様をご紹介いただいた。なんと神田営業所時代の超重要顧客だった会社だ。「創業経営者が新卒採用を見直したいということなので、あなたのことを紹介したいんだけど、いいかな?」と。

この会社は、若杉さん自らが大きく育てた会社だった。当時20人そこそこだった会社を、採用や教育といった面から力強くサポートし、ついには株式を上場させるまでになった。

ただ、現在は事業環境も大きく変化し、いろんな課題を抱えている。人材の採用や教育も、その課題のひとつである。

そりゃあ断れるハズがない。というか、極めて光栄なことである。昔、神田営業所が総力を挙げてサポートしていた会社の採用を、僕に(というかパフに)託そうと仰ってくださったわけだ。

で、その訪問日が昨日。

32年前にも若杉さんに営業同行をお願いしたことがあった。そのカッコ良さに惚れ惚れしたものである。まさか32年の歳月を経て、またこうやって若杉さんと一緒に営業同行できるなんて……。

商談の内容は書けないんだけど、こりゃ絶対成功させないとね。

あ、そうそう。

今から10年前、メルマガのコラム(釘さんの素晴らしき100の出会い)で、若杉さんのことを書いたことがあった。昨日の32年ぶりの同行営業を祝して、以下、転載することにしましょう。

では、自分でも久々に10年前のコラムを読みながら、行ってきます!

<第39話> 「神田営業所長のWさん」   2005/08/22  
Wさんは、1983年当時、僕が勤めていた日本リクルートセンターの神田営
業所の所長さん。

当時まだ30歳ちょっと。30歳のビジネスマンなんて、今の感覚でいえば、
「ぺーぺー」もいいところ。つまりは若僧だ。

でも当時の僕から見れば、Wさんが若僧だなんてとんでもない。とても貫禄の
あるスゴイ社員だった。

Wさんは北海道出身。大学は出ておらず、高校を卒業してすぐに就職した。学
歴社会である日本では、「高卒」というととかく低く見られがち。しかし、そ
んなこと、とんでもない。

Wさんは、東大卒の他の営業所の所長や同年代の課長クラス連中の誰よりも、
優れた識見、知識、人望を持っていた。僕はWさんのことをいつも「かっこい
いなぁー」と思っていた。

遊びすぎて月末にお金がなくなると、Wさんのところに行き、「すみません、
1万円お借りしてもいいですか?」と給料の前借みたいなことをやっていた。

「まーったく、しょうがない奴だな(笑)」といって、大きな財布からサッと
一万円札を取り出す姿がまたカッコよかった。

僕がとある上場企業の社長にアポを取ってしまったときの話である。当時のリ
クルートの営業方針は、とにかく「トップアプローチ」。人事部長や人事課長
や、ましてやヒラの採用担当者と話をするくらいなら、壁に向かって話をした
ほうがマシだ!と教えられていた。
なので、僕はいつも「社長いらっしゃいますか?」と電話をしていた。それで
とったアポが、上に書いた上場企業社長へのアポである。

そのことを周囲の先輩に話したら「え、おまえ上場企業の社長にアポもらっち
ゃったの!? どうすんだ?」と言う。

どうやら「トップアプローチ」というのは、中小企業を前提とした話だったら
しいのだ。

確かに20歳ちょっとのペーペーの営業マンが、上場企業の社長に対してアポ
をもらい営業しに行くなんて、ちょっと失礼な話だ。

そこでWさんに泣きついて一緒に行ってもらうことになった。

そして訪問日。ここでまたWさんに感動してしまう。上場企業の社長(たぶん
60歳くらいだった)を相手に、ムチャクチャ堂々としているのだ。ごく普通に
会話しているのだ。話題も豊富だし、社長もフムフムと笑顔で頷いている。

すげー!かっこいい!!

こんなビジネスマンに自分も将来はなりたいものだ。そう最初に思わせてくれ
た社会人がWさんだった。

ちなみにWさんは現在、秋田県の第三セクターの代表者をやっている。2年前
にいちどお会いした。当時と変わらず若々しい颯爽とした姿だった。

ということで、31番目の出会いは、日本リクルートセンター神田営業所所長
のWさんのお話でした。

 

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