「就活二次戦線」に備える(2)
<前回までのあらすじ>
1.景気動向指数がリーマンショック前の水準に回復した
2.2015年卒は売り手市場化かと言う報道がなされる
3.学生が例年よりも大手人気企業に集中している
4.企業は採用意欲旺盛も、採用基準を下げることはしない傾向
5.この流れは、2011年卒採用の時に似ている
6.当時は採用人数未達のまま、採用活動を終える企業が続出した
※当時のHRプロ社統計によると、34%が採用人数未達。
うち、未達成でも採用活動を終了した企業は43%
7.同じ轍を踏まぬため、どのような準備が今から必要だろうか
要約するとこれだけなのに、ずいぶん長々と書いてしまいました。反省です…
⇒ http://blog.shokucircle.jp/staff/2014/02/10/3736
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さて、今回はいよいよ
「2015年卒採用、採用成功をするにはどのようにすべきか」
を考えていこうと思います。
○その1 初期スクリーニングで落としすぎない
A.不必要な事前ハードルはなるべく取り除く
B.内定期間や入社後、努力すれば大丈夫なことは不問にする
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○その2 機械的に内定を出さない「楽勝な会社だ」と思わせない
C.安易に最終面接の面接に進ませない
D.安易に内定を出さない
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○その3 「地に足が着いた」学生に見逃さずアプローチ
F.3月末~GW明けに「学生の役に立つ説明会」を
G.時期によって選考フローを柔軟に変える
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○その1 初期スクリーニングで落としすぎない
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一般的に、第1クールは一番母集団の質が高いものです。厳しく落としすぎ
てしまうと、第2クール以降で同じレベルの学生さんを集めるのはどんどん
困難になってきます。今年は特に、要領のよいどこでも受かる学生に内定が
集中してしまいそうな気配です。そういう学生はバッティング必至です。
「就活慣れしておらずアピール下手だけど、ウチの仕事や社員には合いそう」
という学生をどれだけきめ細かくフォローし、且つ選考を通して成長させて
いくかが、例年より大事になってくると思います。
【ポイント】
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A.不必要な物理的なハードルはなるべく取り除く
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説明会にエントリーシート・履歴書持参という企業様がたくさんあります。
買い手市場であれば、本気の応募者だけに絞り込むよい手法だと思います。
しかし、放っておいてもたくさん優秀な学生が応募してくる企業でない限
り今年はこうした物理的ハードルは避けるべきです。自社の志望度が上が
っていない状態で、ただ物理的なハードルを課すだけでは「なぜあなたの
会社にそこまで労力を割かないといけないのか」と学生は思ってしまいま
す。実は会って話をすれば、魅力を感じてくれるかもしれない学生を自ら
門前払いしているようなものです。
とはいえ、合わない学生は事前にスクリーニングしておきたいというのも
事実です。私のお勧めは、物理的ハードルよりも心理的ハードルです。
Web(採用HP・Web説明会)や会社説明会のような場で「当社はど
のような人が向いている」ということを学生にもわかりやすく伝えること
です。具体的には「採用情報の徹底的開示」「説明会のような場では、社
員との交流や業務体験ワークなどを実施する」ことです。
きちんと学生に「この会社は自分に合うか」セルフスクリーニングしても
らえるだけの判断材料を提供すれば、筆記試験やエントリーシート等の双
方の手間が増える物理的ハードルを増やさずとも、母集団の適性なスクリ
ーニングが可能です。
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B.内定期間や入社後、努力すれば大丈夫なことは不問にする
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マナー、礼儀、面接(オトナと話すことへの)慣れ、自社理解度…
これらはすべて、内定期間や新入社員研修で鍛えれば済む話です。
現在の採用基準で「選考時にできていること」が本当にどれだけ大事なの
かを見直してみると良いのではないでしょうか。これだけでも、本当は合
うかもしれない学生を落としてしまうリスクは減ると思います。
また「一般的には面接基準と考えられているが、ウチの場合入社後のパフ
ォーマンスには関係ない」ことは不問にするのも手です。これから面接が
本格化する前に評価基準を見直してみてはいかがでしょうか。
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○その2 機械的に内定を出さない「楽勝な会社だ」と思わせない
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某大手人材企業では、学生によって面接の回数が違うそうです。学生を口説
く一方で入社する覚悟がついていない限り、何度でも面接を行うそうです。
機械的なフローで選考を行い、こちらが一方的に内定を通知するから学生も
内定を重く受け止めないのではないでしょうか?内定は本来「採用内定」と
いう事であり、最終選考合格と入社意思の表明が両方成立して初めて内定と
言えます。この原則に立ち返って学生に対応すべきだと考えます。
【ポイント】
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C.安易に最終面接の面接に進ませない
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企業と学生はお互い選びあうものだ、とよく言われます。もちろん、企業
は選考に来た学生に、次の選考にも来てほしいか否か選んでいます。
しかし、学生からすると「合格と言うのはわかったが、次の面接に進むか
否を自分で選ぶのだ」意識的に考えている学生さんばかりではありません。
「当社は、入社の覚悟がある人しか最終に合格しない」
「最終面接を受けるかどうかは自分で決めてほしい」
「もちろん、まだ決められないなら待つ。最終面接の権利も保持する」
「でも、採用予定数が埋まってしまったら、ごめんなさい」
という風に、覚悟のない学生に最終面接にホイホイ進ませないというのが
良いと思います。「何人最終に合格させれば、辞退率が○%なので…」と
いう予想も大事ですが、入社する学生しか内定にしないという本来の言葉
の意義に立ち返るべきだと考えます。
ポイントは「あくまで学生にとってもフェア」であることです。
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D.安易に内定を出さない
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先ほどと重なりますが、内定は本来「採用内定」で、企業が一方的に「あ
なたは内定」と言うことが本来おかしいのだと思います。なぜそのような
習慣になっているのかと言うと「最終面接に合格したらその会社に入るも
のだ」という古い時代の習慣がそのまま残っているのではと思います。
繰り返しますが、本来最終選考合格と入社意思の表明が両方成立して初め
て内定です。これを学生にも伝えたほうが良いと思います。
そのうえで、こう続けます。
「当社からは内定は出さない」
「入社するかどうかは自分で決めてほしい」
「もちろん、決められないなら待つ。内定を自分に出す権利も保持する」
「でも、採用予定数が埋まってしまったら、ごめんなさい」
あくまで最終選考合格は最終選考合格であり、内定かどうか=入社するか
どうかは自分で決めるというスタンスが大事です。
その後は個別クロージング対応です。
「そんなこと、自分の会社がよほど人気企業でないとできないのでは」と思わ
れるかもしれませんが、実はこれ、当社の選考で実施しています。当社は
BtoCでも人気企業でもありませんが、内定辞退は毎年ありません。
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○その3 「地に足が着いた」学生に見逃さずアプローチ
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大手企業ばかり追いかけていた学生は、3月末~4月中旬にかけて「持ち駒」
が無くなります。そこでやっと夢が覚め、地に足が着いた就職活動を始める
方も相当数いると思います。
では、4月に第一志望の企業群に落ちた学生が全然ダメなのか?というと、
そんなことは全くないと思います。
ポテンシャルは高いが憧れだけで、全く向いていない企業を受け続けた学生
もいるでしょう。素質はいいのだが、ただ社会人慣れしていないだけで面接
でうまく自分をアピールできなかった学生もいるでしょう。
そこを逃す手はありません。
【ポイント】
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F.3月末~GW明けに「学生の役に立つ説明会」を
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では、持ち駒が無いからと言って、どこでもいいと思っているかと言うと
そんなことはないでしょう。であれば「この会社に応募する」メリットを
提示しなければなりません。ただ説明会を開けば勝手に来るかと言うと、
そうはならないと思います。
あくまで持ち駒が無い学生にとって「役に立つ」コンテンツを提供するべ
きです。
例えば:
「自分の面接の問題が分かる、模擬面接つき説明会」
「これから新たな業界を探す人のための、会社の探し方講座」
「4月で志望業界に落ち、5月からリスタートして就職を決めた経験を持
つ先輩社員による体験談」
などではないでしょうか。
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G.時期によって選考フローを柔軟に変える
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4月までは、企業の選考はおおむね足並みがそろっていますが、それ以降
は乱立します。自分の会社が一次面接をやっているときに、他の会社では
最終面接ということが頻繁に起こります。
5月以降の選考では「スピード」が重要になります。まさに「拙速を聞く
も未だに巧みの久しきを見ざるなり」の世界です。
そこでは、4月までの選考フローを踏襲する必要は全くありません。
例えば:
「5月の選考からは、選考フローを一つ減らす」
「会社説明会とグループディスカッション(or筆記試験)を同時に行う」
「4月の選考で最終面接に進んだ経験を証明できるものを持参すれば、
1次面接はパス」
「1次面接と2次面接を同日に連続して実施する」
などです。
ちなみに毎年「他社の内定を持っている方は、いきなり最終面接」という
類の施策に走る企業様がいらっしゃいます。気持ちはわかりますが、これ
は道義に悖る行為です。
また「当社の選考を落ちた人で再チャレンジOK!」というのもまま聞か
れることです。これは、新たな母集団形成が絶望的な状況下では無しでは
ないですが慎重に行わないと学生の反感を買います。これをやるくらいだ
ったら、前述AとBを実践し「そもそも落としすぎない」のがお勧めです。