売り手市場を生き抜く採用見直し4つのポイント
こんにちは。マジックドラゴンの土田です。
しつこいですが、2015年卒の新卒求人倍率(1.61)は、2007年問題といざなみ
景気が重なった2006年卒採用(1.60)とほぼ同じ数字になりました。
2007年卒以降を見ると、2007年卒(1.89)、2008年卒、2009年卒(ともに2.14)
と上昇が続きます。リーマンショックが起きた直後の2010年卒ですら、1.62と
2015年卒と同程度の水準でした。
過去の歴史を見ても、求人倍率が「低下・横ばい」の状態から「上昇」の傾向
を見せたときというのは、1年で急激に下がるということは起こりにくいと
言えそうです。※経年グラフを参照
完全に売り手市場にシフトしそうです。
つまり何が言いたいかというと、2016年は「選考実施時期の変化」への適応も
さることながら「買い手市場から売り手市場への変化」にも適応できないと、
かなり痛い目にあってしまいそうであるということです。
——-
しかし、新卒採用というのは2~3年で担当者が変わってしまうものです。現
在、採用の現場に「2007年~2009年卒の売り手市場時代を生き抜いてきた経験」
のある採用担当者様がいらっしゃる会社は非常に少ないのではないかというの
が私の印象です。(かく言う私も2009年3月まで学生でした…)
そこで、今日は「売り手市場を生き抜く採用見直し5つのポイント」をまとめ
てみようと思います。
——-
1.学生にとってのハードルを減らす
単純に言うと、まずは学生に会ってみるということです。
買い手市場時代というのは、企業にも余裕があるため、会うまでに様々な物
理的ハードルを課す企業が増えます。
・ナビにエントリーした後、マイページへの本エントリーを促す
・履歴書を持参しないと説明会に参加できない
・エントリーシートに合格しないと説明会に参加できない
などが具体的な例です。
これらは、効率的に応募者を絞り込むためには良い施策ですが、そもそも母
集団が集まらない時代において、学生に過剰な物理的ハードルを課すのはナ
ンセンスです。
自社の採用フローを俯瞰的に見て「学生にとってそこまでして自社を受ける
メリットがあるのか?」を一度冷静に考えてみる必要があると思います。
「そんなこと言ったって、応募者全員に会えるわけではない」という話もあ
ります。私は「物理的ハードルではなく、心理的ハードルを課しましょう」
とよく申し上げるようにしています。
例えば「採用実績校と採用人数を明示する」「採用基準とその背景を明示す
る」「入社後の仕事内容を脚色なくリアルに伝える」「活躍社員と非活躍社
員の特性を開示する」などです。
物理的ハードルを課すのではなく、ミスマッチ学生に心理的ハードルを課し、
セルフスクリーニングを促すのが良いと考えます。
——-
2.採用基準を減らす(不問要件を決める)
「入社後鍛えれば済むようなことは大目に見ましょう」ということです。
社会人と話し慣れていない、敬語がちぐはぐ、面接慣れしていない、社会人
のマナーを知らない…
こんなことで学生を落としていないでしょうか?
最初は全く社会人とうまく話せない学生も、半年も仕事をすれば慣れます。
社会のマナーやルールは、教えて叩き込めば済む話です。入社後すぐ現場に
行くというのであれば、内定者期間にも教育は可能です。
現在の面接評定表の項目を見て「これ、本当に新卒の採用選考時点で満たし
ていないとダメだっけ?」と自問自答してみてください。
採用基準を下げる必要はないですが「必須ではない事項(不問でよい事項)」
を決めるだけで、格段に落とす学生は減るはずです。
「就職したいんだけど、なかなか求める条件を満たす会社が無いんだよね」
と言っていつまでも就職できない学生と同じミスを犯してしまうかもしれませ
ん。
——-
3.初期選考で自己分析の深さ/志望度や自社理解度を問わない
就職活動が厳しくなくなると、学生は「自分が将来何になりたいか?」「自
分に合う会社とは?」「自分にとって働く上で大事にしたい価値観は?」等
々を考えなくなります。
そんなことしなくても就職できるという安心感があるからです。
(私も学生時代本当に適当に過ごしてました。3年生になるまで「就活」
という単語すら聞いたことのない、世間知らずもいいところな学生でした)
また、企業研究も浅くなります。そのため、自然と面接では「薄っぺらいこ
とをいう学生」が増えるでしょう。
しかし、これは学生が悪いのではなく、外部環境の為に危機感が無いといっ
ていいと思います。
バブル時代の方に聞くと「将来やりたい事なんてなんにも考えてなかった」
という声をよく聞きます。そういう人は入社後活躍しないかというと、そうでも
ありません。
採用選考時点の自己分析の深さ/志望度や自社理解度の高さと、入社後の活
躍度合いには強い関連性は無いように感じます。
特に、2016卒採用では就職ナビオープンの時期が遅くなりますから、余計に
自己分析や志望度・企業研究も浅い学生と会うことが多くなるでしょう。
そんな学生をどんどん落としていたら、採用できません。
内定を出したとしても、それはどこの会社から見ても文句のない学生。
辞退をされてしまうでしょう。
こういった事情を鑑みると、特に選考初期の段階で、学生の自己分析や志望度・
企業研究の深さを問うことは採用成功の妨げとなることを承知しておくべきです。
——-
4.「落とす」より「入れる」選考を意識する
むしろ「選考の場こそ自己分析促進や、会社理解・志望度向上の機会だ」
ととらえるべきでしょう。
選考で学生の志望度を上げるには「学生の役に立つコンテンツ設計」「学生
に納得感を与えるストーリー設計」に尽きると思います。
「学生の役に立つコンテンツ設計」
・自社の売り込みだけでなく、業界全体のことがわかる説明会
・業務ロープレや模擬面接付きの説明会
・ビジネススキルが身につくグループワーク選考
・フィードバックが得られる面接
・内定後の進路相談カウンセリング
「この会社の説明会/選考は役に立つから、次も行こう」と思わせることで
す。しかし、ただ学生応援を謳えばよいかというと、そうでもありません。
独りよがりのコンテンツは学生にもわかってしまいます。「自社の持つリソ
ースを活用して、学生のどんなニーズを満たすのか」を考えることが重要に
なります。
「学生に納得感を与えるストーリー設計」
・複数の先輩社員と個別で話ができる説明会
・面接の後に実施するオフィス見学
・入社後の業務を疑似体験するグループワーク選考
・経営者/役員からの「内定の理由/入社後の期待」フィードバック面談
・最終面接前に、1日出社体験
・社員との飲み会や、社内行事などに呼ぶ
・給与制度を開示する
・社員のキャリアパス例を複数提示する
よく学生が入社理由に「入社後がイメージできた」と言います。これは言い
換えると「入社後の人生(業務内容・職場環境・キャリア・人間関係)に関
して、透明性の高い情報が得られた」ということだと思います。
学生がどうしたら「入社後がイメージできるか」を考えることが重要になり
ます。
——-
・放っておいても応募が来る
・放っておいても企業研究熱心で志望度の高い学生が来る
ということはまずないと思って臨んだ方が良さそうです。
「どうすれば自社に必要な人材を、必要数確保できるか?」
という根本的な問いへと立ち返り、答えを考えてみるいい機会でしょう。