ゴリラ的読書日記之5
こんにちは。早いものでもう5回目。相変わらず一貫性の無いテーマ選びですが、その時々で表層的な興味関心は移り替わるものかな(探求と探索の違い)…と思い、脈絡無く今回もいきます。
□入山章栄(2015)『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』日経BP社。
□動機:『世界の経営学者はいま何を考えているのか』 英治出版から2011年に出された同書は周囲の経営学に対する見方を変えるに充分な程のインパクトを与えた著書であると思います。
MBAに代表されるよう、ビジネスフレームワークを駆使し、ビジネス上の課題を一刀両断する学問としてのイメージが先行してしまうために、経営学は周囲にかなり誤解されていました。確かにポーターやバーニー、チャン・キムなど秀逸なフレームを提示し、ビジネス界に多大な影響を与えた経営学者はいますが、それはあくまで一般向けの別顔。蓄積された研究成果を一般化し、実業界で活用してもらえるように簡略化して提案、そして大喝采の下受け入れられただけのこと。経営学はあくまで課題解決の糸口を探る学問ではなく、ビジネスの世界の真理、メカニズムを探求する学問であり、課題解決に対しては特段コミットはしていない。一言に、そこまで期待されても荷が重い、というのが本音であることをペロリと述べてしまった驚愕の著書でした(本書もそのスタンスを踏襲してはおりますが、上記学者のよう、よりビジネスの世界への還元を我々は目指すべき、と入山さんは主張しております)。
それでは本当の経営学って何をやってるのだろう??と怖いもの見たさで関心が湧くのは当然の流れであり、同書はそれでヒットしたのだと推察します。中身は先行研究のレビューをしているだけですが(非常に分かり易く、ビジネスパーソンであれば誰もがスラスラ読める良書であることが大前提です!!)、この湧き上がるだろうニーズを予測し、見事に掴んだ出版社と入山さんの嗅覚は半端ない…と感じます。出版社が違いますが、その続編を匂わせる本書…話題になる前に先に読んでしまおうと、ミーハー魂全開で手に取りました。
□所感:最先端といいつつも、主に1980年代頃から脈々と生き続ける鉄板理論が多数散りばめられています。ただ私が初めて知り、且つ興味深かったものが6章、「働く女性の経営学」でした。
未だダイバーシティは流行のビジネスワードとして残ってはいますが、ここで語られるダイバーシティに関する先端研究は頷けることばかり。同類(例えば、人種、性別、出身校など)で固まる方が「基本」は組織のパフォーマンスが高まる(スポーツがその典型だと感じます)。但し、不確実性が高まると固定化された行動様式、思考パターンでは太刀打ちできなくなり対応が出来なくなる結果、パフォーマンスの低下が始まる。イノベーション研究でもコンセンサスが得られていることですが、異なる背景、異なる思考が重なることで、新たな知見が生まれるという事実はビジネスの現場で働く私達でも納得出来る事象であり、パフォーマンスの低下が始まった組織が次に求めなければならない行動であることは明瞭です。そしてダイバーシティを推奨する方々のロジックは上記内容で大筋外れてはいないでしょう。一方で先にも述べたよう、凝縮性が薄れることでパフォーマンスは低下してしまう…まさにダイバーシティのジレンマです。
先端の経営学ではこのジレンマに対し、業績を伸ばしながらも、ダイバーシティを真に推奨する組織、企業を揃え、分析を施すことで新たな知見を世に生み出しました。「フォルトライン理論」です。……そしてその続きは本書で!!!(決して出版社の回し者ではございません)
□お薦め著書
・入山章栄(2011)『世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア』英治出版。
・三谷宏治(2013)『経営戦略全史』ディスカヴァー・レボリューションズ。
・ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編(2014)『ハーバード・ビジネス・レビュー BEST10論文』ダイヤモンド社。