ゴリラ的読書日記之16

こんにちは。16回目に入りました。

白状すると、締め切りに追われこの原稿を書いております。

ですので、前置きを削除して超がつくほどに短い本題に入りたいと思います。

■増田寛也編(2015)『東京消滅-介護破綻と地方移住』中央新書。

■動機:

一部の方々には衝撃的な『増田レポート』と呼ばれる消滅可能性都市を記した報告書が世に出ました。今回はその第二弾。先のレポートでは出生率と出産適齢期の女性の減少率、その数などを用い、該当する都市を炙り出し、そこに住まう人々にソフトな都市部への移住を提案する(当然強制移住を促したら..日本の道徳が失われてしまうため、「敢えて」ソフトな言い回しにしているような気がします)ものでした。今度は受入先として有力な東京が消滅する?あり得ないよ、と思いながらも好奇心で本書を手にとった次第です。

所感:

筆者らが「東京消滅」の根拠としているのが、東京を代表する都市部の高齢化の進行(しかも今はまだ穏やかであるが、2015年、すなわち今から2025年の間に急激に高齢化が進む..2025年には3人に1人は高齢者となる)が現在抱える介護福祉キャパシティを遥かに凌ぐために、難民が増加する。支えるだけの財源も無い。益々働き盛りの世代が介護に追われ、労働人口の減少が加速する。更に税収が下がる..とBadスパイラルに陥ることを回避するために提案するのが、シンプルに、その余力のある地域への移住の促進でした。

細かな算出方法は本論から逸れるために割愛しますが、全国で41地域、関東から見た場合の近郊として、富山や上越、山形などがあげられています。この41地域であれば、(現時点では)未だゆとりがあり、受入が可能。都市化も進んでおり、生活面で(は)不便を感ずることはない。交通アクセスも良好。さあ快適なシルバーライフを満喫しましょう、と高齢者に地方への移住を促す提案でした。

先のレポートではどちらかといえば、働き盛り世代を対象に大都市とその大都市と接続されたハブ都市への移住を促していたのと対照的に、その盛りを終えた方々は地方へと、現代版「姥捨て山」論とも捉えられかねない非常にナイーブな主張ではありますが、筆者らは高齢者の消費意欲や水準の高さを理由に、受入先の地域にも恩恵はあると述べています。

さてさて..読んでみての所感..これは先のレポートを一読した際の所感にも通ずるものですが、理屈でいえば「アリ」であるという立場です。ただし「フェア」な合意形成の上での決定でないことにはあり得ないという立場です。そしてむしろこのフェアな合意形成をどのように国民に問い、議論を促し、意思決定を行うか..このプロセスを構築する方が、その理屈を構築することより遥かに困難である..というより人道的なプロセスでは不可能なのではないか(人間なので)。よって都市部や地方への移住促進を国策として斡旋することは難しいという最終的な意見です。

それではお先真っ暗か、というと実はそうとも思っていません。それは人間は何だかんだで「合理的な」生き物であると考えているためです。誰しもが損得に対し、強い動因を有していることは実証されており、それは道徳感情を超越します。皆が損得勘定を上品に剥き出しにしたからこそ現在の繁栄があることは事実です。いずれ大都市、例えば東京に住まう効用は目に視える格好で減少します。そして近隣が良く見える..強制的に促さなくても、損得という人間が有する最も根源的な欲求に委ねれば、自発的に動き出す..と楽観しています。今は。

そろそろ締め切りが迫り、というが過ぎてしまったので、ここで打ち切りとしたいと思いますが、議論をする上で、賛否はともかくとした、共通知識として多くの人が知るべき情報であることは間違いなさそうです。

やはり性分..超、短く出来ませんでした(笑)

■おススメ本

増田編(2014)『地方消滅』中央新書。

小田切(2014)『農山村は消滅しない』岩波新書。

山下(2014)『地方消滅の罠』ちくま新書。

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