ゴリラ的読書日記之18
こんにちは。18回目となりました。
今回も短納期を意識して(で、投稿に遅れる始末)、長い前説を飛ばしていきたいと思います。
エコ・ゴリラ。エコリラ。エコリ。
■加藤久和(2016)『8000万人社会の衝撃 地方消滅から日本消滅へ』祥伝社。
■動機
以前の投稿にも登場した加藤先生。
話題の人となった増田寛也氏が座長を務める日本創生会議のメンバーとして、人口経済学、社会保障論を専門に第一線でご活躍される大学教授が一般向けに執筆された著書です。
ここでは余り立ち入った話は避けたく思いますが、日本創生会議、そして増田氏を中心に発表した『増田レポート』を受けての加藤先生、その独自の視点で提言をまとめた著書であると捉えて問題ないかと考えます。
(是非、増田レポートを一読した、もしくは増田氏の言動に注目されている方がいらっしゃいましたら、副読本としておススメしたい一冊です)
で、私はレポートも拝見し、且つ言動に注目している人間の一人でした。
■所感
加藤先生も序章にて述べているよう、これらの事実は特にこれから社会に出る大学生、もしくは社会人としてこれからの日本を支えなければならないだろう若者に知っていてもらいたい、というより知らなければならない教養であると私も思います。
(知らない方が良い..という意見も当然理解出来ます。確かに。但し、その選択肢を選んだ場合は社会に迷惑だけはかけてはいけないと考えます)
日本は超・少子高齢化社会であるというのは国民皆が知っている情報です(個人的には少子・高齢化社会とすべきではないかという意見はありますが..というのも非常に両者は密接に結び付いている一方で、全く異なる次元の話であり、議論が包括的になり空中浮遊するケースを良く見るためです)。
ただ加藤先生がこれも述べているよう、知ってるだけで、想像できていない。即ち、対岸の火事MODEのままである。もしくは個人主義に走るが故に、気にしているゆとりがない(このケースは最悪ですね。一番結果的に損するのに..)。
想像をかきたてる事例、その代表格としてお財布事情に直結し易い扶養率推移があります。
2010年時点、社人研によると扶養率(現役世代が何人で高齢者(65歳以上)一人を支えているか率)は2.6。
これが現在の出生率推移(将来予測含む)を維持してしまった場合、50年後には1.2。即ち、今から生まれてくる次世代サムライ(なでしこ)ジャパンのメンバーはお爺ちゃん、お婆ちゃんを一人で面倒を見なければならないということです。
ゲスな言い方をすれば、余分に一人分の出費が増えるというということです。凄いことですね。お爺ちゃん、お婆ちゃんの月に一回ある温泉地巡りへの交通費、宿泊費を代わりに払わなければならない..と云えば、感度ある個人主義の方々にとっては大きい衝撃になると思います。
であるならば、生産性を高め、GDPを持ち上げればよいという意見が出ます。ハイ。仰る通りで、私も心からそう思います。
多分にこの発言をする人の大半は生産性を時間当たりの付加価値額に近い概念で認識していると考えます。私も生産性を表現する時はこの概念に近いものを連想しています。
正確には誤りです。日本生産性本部の定義によると「工学的な技術革新や様々なイノベーション、ブランド戦略、革新的な経営戦略、知的財産の有効活用などを包括した広義の技術進歩を表した指標」であり、すんごいファジーな概念であるということです。
指標としては実質経済成長率に寄与する労働力人口、資本ストック、生産性のうち、労働人口による寄与率と資本ストックによる寄与率、以外で成長率に寄与した全てとして表されます。すんごいファジーです。でもこれが生産性統計の実態です。
実際、経産省が2013年に発表した「通商白書」に生産性上昇率の決定要因を回帰分析を用い分析していますが、恐ろしいことに決定係数が0.162..即ち、殆ど生産性の姿を説明できていないのです。あのプロ達ですら、です。
(且つ、2000年以降の日本の経済成長を支えてくれた唯一無二の存在が生産性、だけです。労働力人口と資本ストックがむしろ生産性の足を引っ張りました。これ以上、もっともっと生産性を上げろというのか..)
長引いたので、ここで終わりにしますが、是非とも特に若者はやはり実情を正しく認識する必要があると思います。
でないと、ゲスな言い方かもしれませんが、その結果バツをくらうのは自分たちであると..
■おススメ本
大竹文雄(2005)『日本の不平等』日本経済新聞社。
橘木俊詔(2006)『格差社会 何が問題なのか』岩波新書。
加藤久和(2007)『人口経済学』日本経済新聞出版社。