マングローブの今野社長が昨日アップしていたブログは、次のようなタイトルだった。
「人をタイプ分けしないで見る」(←記事の全文はクリックしてご覧ください)
思いっきり要約すると、「人を観る際に、安易なタイプ分けをしたり、レッテルを貼ったりしちゃ駄目だよ」ということ。
今野社長は次のような言葉で昨日のブログの記事を結んでいる。
大事なのは、今目の前にいる人ときちんと向き合うこと。
人が何を感じ、何を考え、何をしているか、何をしようとしているかを、理解するように努めることがとても大切だ。
僕もまったくその通りだと思う。
多くの企業が採用時に使っている適性検査にSPIという、その名の通り、応募者の適性をチェックするための検査がある。
科学的データに基づいた、実績も品質も兼ね備えた、立派な適性検査であるとは思う。
しかしながら、この適性検査の結果は、実はあてにならないことも多い。
デタラメというつもりはない。少なくとも、受検した時点での、その人の考えや志向性、価値観などは、ちゃんと反映されているはずだ。
問題なのは、「人間は様々な環境や立場を経ることによっていくらでも変化する」ということだ。
僕の周りにも、そういう変化した人間はたくさんいる。いや、変化していない人間は殆どいないといったほうがいいかな。
プラス方向に変化(成長)した人もいれば、マイナス方向に変化した(つまらない奴に成り下がった)人間もいる。
プラス方向に変化した人間の多くは、逆境に恵まれて(?)、それを懸命に努力して潜り抜けた奴だ。マイナス方向に変化した奴は、自分で物事を考えなくても済むような楽な環境や、道義に反することを平然とやってのけるような悪の環境に染まってしまった奴だ。
検査を受けた時点では、「絶対適性がない」と思われた領域の仕事であっても、その人の、その後の様々な環境との関わりあいによって、天職のような仕事になることもある(実際は仕事が変わるわけじゃなくて人が変わるわけなんだけど)。
論より証拠。僕は、自分が22歳のとき(大学3年生の終わりのころ)に受けた自分自身のSPIの結果をすべて知っているのだが、その内容と、37歳のときに再度受けたSPIの結果は、まったく違うのである。今野社長のブログでも同じようなことが書いてある(今野社長も、若いときの適性検査では、「社長にはもっとも相応しくないタイプ」という結果が出たらしい、苦笑)。
で、本日僕が言いたかったのは、「だから適性検査なんて使うのはやめましょう」っていうことではない。そんな骨肉の争いに発展しかねないような営業妨害を、僕がするはずがない(分かる人だけ笑ってください)。
「適性検査とバカとハサミは使いよう」で、ちゃんとした(適性検査の限界も含めて使い方を理解している)大人が、ちゃんとした使い方をすれば、とても有用なものであると思う。僕も、パフの選考では必ず使っているわけだし。
僕が、「なんだか危険だなあ…」と感じているのは、ここ最近のリクナビの広告を見てのことだ。
あすオープンするリクナビ2011では、適性検査(SPI)もどきの「自己診断ツール」が用意されているという。これを学生に受検させ、その結果に基づいて、「あなたにお似合いの会社や仕事は、こんな感じの会社や仕事だよ~」ということを、学生に知らせるらしい。
一方で、リクナビ掲載企業は、その検査結果を裏側から利用して、学生をセグメント(タイプ分け、ふるいわけ、スクリーニングっていうことかな?)することができるらしい(もちろん個人情報は守られるのだが)。
「ミスマッチをなくす」、「効率を求める」という大義名分のもと、Webの中だけで、これを行おうとするリクナビに、僕は危険な匂いを感じるわけだ。
●“まだ知らない「自分1位」の会社を探すための自己診断ツール”なんて、耳触りのいい言葉を使って学生を誘導しようとしているが、未熟で影響を受けやすい学生は、この検査によって、逆にミスリードされやしないか?
●未熟な採用担当者の成長機会を(人を見る目を養うという意味では)奪ってしまうんじゃないか?
●「忙しい」とか「費用対効果が…」とかが口癖の採用担当者は、本気で学生と向き合うことを、いま以上にしなくなるんじゃないか?
・・・そんなことがとても心配になる。
最後に、あらためて今野さんのブログの言葉を引用しよう。
大事なのは、今目の前にいる人ときちんと向き合うこと。
人が何を感じ、何を考え、何をしているか、何をしようとしているかを、理解するように努めることがとても大切だ。
心ある採用担当者には、ゆめゆめ道を踏み外さないように、十分注意をしていただきたいと思う。