釘さん日記

頑固オヤジの『うまれよ』。

職サークルのメルマガで、先日まで、 「オヤジから最愛の娘&息子たちへ」というタイトルのコラムを執筆していた。

今年の7月下旬から4カ月間。『頑固オヤジ』のキャラになりきって書いてきたのだが、本来のキャラではないので、正直ちょっと辛かった(笑)。

先日の配信で最終回となったわけだが、最後の3週間は、「うまれよ」について執筆した。

「うまれよ」はパフの、そして僕自身の精神的支柱であり、行動規範に通ずるものである。

頑固オヤジの最後のメッセージとして、その意味をあらためて書き下ろしてみたのだが、さて、果たして、娘&息子たちには響いたのであろうか……。

あらためて「釘さん日記」にも転載して記録しておこうと思う。

(※以下、「うまれよ」の記述部分のみを抜粋して転載しました)

うまれよ の「う」。
それは、『うそをつくな』だ。

どんな聖人君子だろうと、人間である限り、一度や二度のウソをつくことはあるだろう。

ウソとは言えないまでも、本当のことを言えないことは生きていくなかでは数多くあるだろう。俺も過去たくさんのウソをついてきた。

しかし、やっぱりウソはダメなんだ。

ついていいウソと、ついてはいけないウソがある、と人はいう。

俺もそう思いながら「ついていいウソ」をついてきたのだが、それはともすると、ウソつきに対して「ウソをついても構わない」という免罪符を与えることにつながってしまう。本当は「ついてはいけないウソ」なのに、「これは、ついても仕方ないウソだったんだ」という言い訳を与えてしまうことになると思うんだ。

俺は少し前に、ある人を助けるために大ウソをついたことがある。そのときは、それが正しいことだと思った。

しかし結果的に、そのウソは、その人を助けることにはならなかった。それどころか、そのウソが呼んだ別のウソによって、その人をさらに苦しめることになった。後悔してもしきれない。

他人に対するウソはもちろん、自分に対してのウソもダメだ。自分の心の声によく耳を傾けろ。好きでもないことを好きだと言うな。おもしろいと感じたことは自信をもっておもしろいと言え。ただし勘違いするな。それは、独善的になることではない。常に謙虚に、そして客観的に、自分自身を見るんだ。

就職と採用には、ウソが公然とまかり通っている。「ウソも方便」という奴も、なかにはいるだろう。

しかし、俺はお前にはウソをついてほしくない。不器用な奴だと言われても、馬鹿正直な奴だと思われても、ウソをつかずに、自分の正義を貫いてほしい。

☆☆☆

うまれよの「ま」。
それは、「まけるな」だ。

残念ながら、就職活動は楽ではない。思うようにいかないことばかりだろう。

10社や20社、連続して不合格通知をもらうことなんてザラだ。たぶん、いまだかつて経験したことのない挫折感を味わうことになるだろう。自分が全否定されたような錯覚に陥ることもあるだろう。

しかし、それは決して「負け」などではない。これからの長い人生に勝つための試練なのだ。

本当の「負け」とは、あきらめて困難から逃げることを言う。うまくいかない原因や理由を、他人や世の中のせいにして、自分の努力を放棄したときに「負け」が確定する。

失敗をくり返しても、うまくいかないことが続いたとしても、絶対にあきらめるな。逃げるな。

でも、本当につらいとき、苦しいときは、立ち止まってもかまわない。休んでもいい。誰かに助けてもらってもいい。それは、全然はずかしいことではない。

進んでいる方角を、軌道修正することが必要なときもあるだろう。それは、逃げるためではない。勝つためだ。

あきらめなければ、逃げなければ、ぜったい最後には勝つ。

まけるな。

苦しくなったとき、なにもかも放りだしたくなったとき、このことを思いだしてほしい。

☆☆☆

うまれよ の「れ」。

それは「礼儀正しくしろ」だ。

俺は学校卒業後、社会で働いて28年になる。学生時代のアルバイトも含めると、32年間働いてきた。

小さな会社も大きな会社も経験した。学生時代は駅弁製造工場で1年。割烹料理屋で半年。バス会社で添乗員として2年ほど働いた。

いろんな社会人が、いろんな職場にいた。いろんな大人たちが、いろんな職場での、お客様やパートナーだった。

22~23歳のころまでは、仕事で一緒になる社会人のほとんどが俺よりも年上。

時には、芸能人やプロスポーツ選手と会うこともあった。倍以上、年齢の離れた企業の経営者や重役の方々と打ち合わせをすることもあった。

そして、いろんな社会人と一緒に仕事をするなかで発見したことがある。

それは、

「本当にスゴイ人、偉い人、一流の人ほど、礼儀正しく、腰が低い」

ということだ。

これは、俺が大学2年生のとき。バス会社で車掌のアルバイトをしているときのエピソードだ。

あるプロ野球チーム(差し支えないと思うので明かすが、広島東洋カープだ)の選手たちを、都内のホテルから後楽園球場(今の東京ドーム)まで、貸切バスで送っていく仕事があった。

球場に着くと、俺はバスを降りる選手たち一人ひとりに「お疲れ様でした!試合がんばってください!」と挨拶をして見送るわけだが、若い選手たちは、車掌の俺なんぞに挨拶を返してくれたりはしない。

しかしそんななか、球界を代表する超一流プレイヤーだった山本浩二選手と衣笠祥雄選手の二人だけは、俺の目を見てニコッと笑って「ありがとう!」と言ってくれたんだ。

超一流選手の二人にお礼を言われるなんて……。思わずゾクゾクしたことをよく覚えている。

そしてさらにゾクゾクしたのは、いちばん最後にバスを降りてきた古葉竹織監督の丁寧なお辞儀だ。

古葉監督は帽子を脱いで「私たちを安全に送っていただき、ありがとうございました」と、低く太い声をゆっくりと発しながら、深々と頭を下げてくれたのだ。

このころの広島カープは、リーグ優勝、日本シリーズ制覇を重ね、赤ヘル軍団として隆盛を極めていた。

その常勝球団の監督とスター選手のこの礼儀正しさ。俺はまだ学生だったんだが、むちゃくちゃ感動したものだ。

一方で、中途半端に優秀な奴(優秀なように自分を見せようとしている奴)や、中途半端に偉い(と勘違いしている)奴は、いかん。

スポーツ選手だけの話ではなく、一般の会社員も含めて、すべての社会人に言えることだ。

中途半端に偉い奴は、態度がふてぶてしい。頭を下げるということを知らん。

自分の(相手より相対的に優位な)立場に安住し、ふんぞり返ってしまうんだな。あるいは、偉ぶることでしか自分の威厳を保てんのだな。

見ていて実に不愉快だし、痛々しいものだ。

それはともかく。

お前たちは、とにかく礼儀正しくしろ。周囲の人たちに心から敬意を払え。

特に挨拶だ。

大きく、はっきりと、心のこもった声で挨拶するんだ。相手の目をしっかりと見て、きちんと頭を下げるんだ。

就職活動中はもちろんだが、お前が社会に出て、仕事をある程度こなせるようになった時こそが要注意だ。

人は、少し仕事が出来るようになると、自惚れ、ついつい他人に対して傲慢になることがある。

しかし、いつまでもそれが続くと、そういう奴からは、人も仕事も遠ざかっていく。

でも、悲しいかな本人は、そのことに気がつかない。そして、ついには自分自身の成長機会を逃してしまうんだな。

お前たちには、そんな残念な奴にはなってほしくない。

☆☆☆

長くなってしまった。

さあ、最後だ。

うまれよの「よ」。

それは、「世のため人のため」だ。

お前たちは、誰のため、何のために仕事をする?

飯を食うため。家族を養うため。文化的な生活を送るため。自分の能力を伸ばすため。偉くなるため。金持ちになるため。自己実現のため……。

いろいろあると思う。いや、いろいろあっていいと思う。

でもな、自分のためだけ、自分の身内のためだけに働くのでは寂しいし、つまらんと思う。いや、きっとそのうち、お前自身がつまらんと思うようになると思うぞ。

せっかくこの世に生まれてきたのならば、いつかは、「俺は(私は)いま、世のため人のために働いています!」と、胸を張って言ってみたくないか。

大きなことをやれとか、目立つことをやれとか、経営者や政治家や技術者になれ、と言っているわけではない。もちろん大きなフィールドにもチャレンジしてほしいが、皆が皆、そんな機会や才能に恵まれている訳ではないからな。

小さなことでも、目立たないことでも、間接的なことでも構わないから、お前の働く理由が、世の中を見据えたものであってほしい、ということなんだ。

自分の仕事は、世の中のためになっている。誰かを幸せにすることに繋がっている。そう自信をもって言えるような働き方をしてほしいんだ。

まだ見ぬ自分の子供や孫の世代のために、この世の中を今より少しでも住みやすい世の中に変えていく。

就職したあとは、ぜひ、そういう気持ちで目の前の仕事に取り組んでほしいと思う。

☆☆☆

う …… うそをつくな

ま …… 負けるな

れ …… 礼儀正しくしろ

よ …… 世のため人のため

これが、俺が最後にお前たちに伝えたかったことだ。

これから始まる就職活動。この、うまれよの4文字を胸に刻みながら、ぜひ頑張ってほしい。

そしていつかは、お前に「社会に役立つ価値ある人材」になってほしい。

俺に限らず、オヤジっていう奴は、不器用で、頑固で、言葉数も少なく、なかなか素直になれない人種が多い。お前たちにとっては、ちょっと煙たい存在に映ることもあるかもしれない。

だがな、俺たちオヤジは、心の中ではいつでもお前たちを応援していることを覚えておいてほしい。

以上で、俺のオヤジコラムを終了する。

じゃまた、いつかどこかで会おう。元気でな!!

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