釘さん日記

幼いころを思い出してみる(15)

「クギサキ、お前は柔道をやるために生まれてきたようなもんじゃの、練習を続けていたらそのうち強くなるぞ、ガハハ」

・・・と、言われてその気になって、つらい練習にも耐えながら数か月が過ぎていた。

しかし、一向に強くなった自覚がない。

先輩と乱どり稽古(実際の試合のような練習)をしても、いつもコテンパンにやられるばかり。勝てたことなんて一度もなかった。

そんな僕も2年生になり、大会に出なければならない日がやってきた。大分郡の大会で、僕は個人戦に出場することになった。

結果は、惨敗。

詳しい試合内容は忘れてしまったが、とにかくあっという間に投げられたという記憶がある。

弱さを実証してしまった僕は、以来、試合に出ることはほとんどなくなり、もっぱら補欠選手となる。まあ気楽と言えば気楽なのだが、やはり悔しいという気持ちもあった。

柔道といえば、やっぱり黒帯。

黒帯を締めた柔道着姿には、こんな弱い僕でも、強い憧れを抱いていた。

大分県では夏と冬の2回、昇段試験が行われていた。

中2の1月か2月ころだったと記憶している。僕は、昇段試験を受けることにした。

当時の同期部員たち(たしか僕を含めて7名いた)も全員、昇段試験を受けるために、遠く大分市まで朝いちばんの汽車に乗って出かけて行った。

試験場は、大分市内の大きな体育館。

いかにも強そうに見える柔道家たちが、ぎっしりと詰めかけていた。

(果たして黒帯はとれるのか?)

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