釘さん日記

床屋のマスターを紹介する日

きょうは朝から三田にある床屋に行った。

「床屋」(とこや)って、最近の若い人たちはあまり使わない言葉のようだ。というか、昔っからの純粋な床屋さんが少なくなってきたのかな。

いまの若い人たちは、ほとんど床屋ではなく、美容室と呼ばれる洒落たお店に行っているようだが、僕は美容室というと、「女性が行く店」という固定観念が根強くあり、どうも敬遠してしまう。

・・・と、そんなことはどうでもよくって、話は三田の床屋の話。

僕はもう10数年以上、この床屋に通い続けている。

マスターは現在68歳。マスターのお父さんが三田の地に床屋さんを開業して以来の床屋稼業で、戦前からずーっと続いている歴史あるお店なのだ。

一時は従業員を抱えてやっていたのだが、最近は競争の激化からか、マスターと息子さんのふたりだけでお店を回している。

で、このマスターが、ただものではない。

床屋としての腕前も凄い(コンクールでも数々の受賞歴がある)のだが、それ以上に、絵の腕前が凄い。プロ級なのである。

といっても、本格的な絵は、数年前に始めたばかり。毎朝、自宅からお店に自転車で出勤する途中に、荷台にスケッチブックを括りつけ、目にとまった景色をスケッチしている。いつも僕が店に行くと、まずは最近スケッチした絵を観るところから始まる。

きょうは見事な松の絵を見せてもらった。

 

上野の美術館にも何回も出品している。コンクールにも応募しており、今年は新人賞を狙ったらしいのだが、惜しくも受賞は逃した。

また絵だけではなく、「書」もやる。厚手の本に、毎日必ず1枚の書を書くことを習慣にしている。数百ページの本が、もう3冊になったそうだ。

それからお神輿を担ぐのも趣味にしている。東京都内の主だったお祭りには、必ず顔を出して担がせてもらっているらしい。

多趣味で多芸多才。人間的にも、ものすごく深みのある方で、おしゃべりしていると、勉強になるし、ホントに癒される。

自分の床屋という職業にも、凄い誇りを持っている。

「マスターは、なぜずっと床屋をやりつづけてこられたんですか?」とあらためて聞いてみた。

「そりゃあ、クギサキさん、喜んでくれるお客さんがいるからだよ。オレが働く理由なんて、それしかないよ」

そんな答えがすぐに返ってきた。まさに「傍楽(はたらく)」である。やっぱりホンモノは、どんな職業であっても、考え方は同じなんだよな。

きょうはマスターに許可をもらって、この日記に掲載するための写真を撮らせてもらった。

あ、そうだ! 次のSHOKUNIN魂(パフが年に2回発行しているフリーペーパー)の職人として登場してもらおうかな。職人とは、まさにこういう人のことを言うんだと思うな。

 

白くて長い髭がまた魅力的だ。カメラを向けられてちょっと照れてます^^。

 

 

マスターの最近の作品。幻想的な絵が得意なのだ。最近まで上野の東京美術館に展示されていました。

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