パフ代表の徒然ブログ「釘さん日記」

就職人気企業ランキングの愚

2011年2月22日 (火曜日)

昨日の日経新聞第二部は「広告特集」。この特集の第一面に掲載されている広告(しかも【全面広告】)は、就職情報サイト「日経就職ナビ2012」が、昨年の11月から今年の1月にかけて調査した、「就職人気企業ランキング」であった。

就職人気企業ランキングの愚かさについて、僕は、毎年この季節になると、少なくとも一度はブログやコラムで書いているのだが、僕に影響力がない(><)こともあって、なかなか世の中から消えることがない。でもまあ、本日の日経新聞は、【全面広告】として扱っているので少しはマシかもしれないな(笑)。

学生の皆さんには、このランキングが、企業の実力を評価したものではないことを理解しておいていただきたい。就職情報各社が発表しているランキングのほとんどは、その就職情報会社のメディアに出している広告量と広告タイミングと広告予算と密接な相関関係がある。そういう性質のものであるということを、冷静な目で見てほしい。

「就職人気企業ランキング」を分かりやすい言葉で表現するならば、こうなる。

 

「業界のことも会社のことも仕事のことも、まだ全然理解できていない時期の学生が、ちょうどアンケートが送られてきたタイミングで目にすることの多かった広告に左右されながら、イメージ先行で『入社したい』と回答してしまった会社のランキング」

 

ということである。

このランキングは、お金さえあれば(そして少し優秀な広告プランナーがブレーンとしてついていれば)、操作可能なものなのである。

「この時期は、ちょうど就職人気企業ランキングの調査の時期ですから、集中的に調査対象の母集団に対してDMを打っておきましょう」というのは、就職情報会社の営業マンのよくある提案である。

就職人気企業ランキングとは、所詮、その程度のものなのである。

もっとも、アンケートと連動した広告の効果だけではなく、最終消費者向けの商品やサービスを提供していて、テレビCMなどが上手な会社もランキング上位に入りやすい。逆に、どんなに会社としての実力があろうとも、業界や市場の評価が高かろうとも、日頃、一般消費者向けに広告を打たないBtoBのメーカーなどは、ランキングに入りにくい。もし、一般に知名度のない会社でランクインしているところがあれば、それはその就職媒体(あるいは媒体読者)に、相当量の広告を、集中的に打ったのだろうということが推測できる。

そもそも、この手のランキングは、会社の経営者や役員クラスが、やたらと気にするから厄介なのだ。そして、発表されたランキングがライバル会社に負けていようものなら、採用担当者は経営者や役員から、こっぴどく怒られてしまう。

嗚呼、悲しきかなサラリーマン。怒られると自分の評価や出世に響くので、ランキング対策に相当な予算を申請してお金を使う。そして、ライバル会社よりも上の順位を獲得して、ほっと胸を撫で下ろす。その姿をみて、広告営業マンたちは、「いやー、良かったですねー。今年は一気にランキングが上がりましたよ。しかも、ライバル会社に10位以上引き離しましたよ。来年はぜひベストテン入りを目指しましょうね(イヒヒ)」と、採用担当者に囁くのだ。

もちろん、こんな就職ランキングでも、「上位に来ることが会社のブランディング戦略として正しいこと」とするのは、その会社の考え方次第なので、文句を言う筋合いではない。

ただ、学生の皆さんには、このランキングの構造をよく理解しておいてもらいたい。決して、このようなランキングに惑わされないでほしい。ランキングに登場しない会社のほうが圧倒的に多いということを理解しておいてほしい。世の中の(新卒採用を行なっている)会社の99%以上が、ランキングに登場しない会社なのである。そこにこそ、皆が入社後、活躍できる会社が隠れている可能性が高いのだ。

 

※ちなみに、昨年はこんな記事を書きました。⇒ 就職人気企業ランキングのことを書く日

「こんなくだらないものやめちまえ!」…なんて吠えてます。昨年は今年よりも口が悪かったんだな(笑)。