パフ代表の徒然ブログ「釘さん日記」

2016年卒の新卒採用の動きがいよいよ活発化してきた。水面下ではずいぶん前から始まっていたのだが、学生の後期試験がひと段落したことで、この2月からはいろんな形式で実質的な「採用を目的としたイベントやセミナー」が開催される。

だが、肝心の学生のほうのお目覚め具合はいまひとつ。

無理もない。

企業のこの動きが、採用を目的としているということに気づいていないからだ。

大半の学生は企業の真意に気づかずに、

「ナビのオープンは3月1日からでしょ?」

「選考は8月1日からでしょ?」

「先輩も、今年は売り手市場だからチョー楽勝だって言ってたしー」

「いま、あくせく動いてるとなんかカッコ悪いしー」 

などと言っている。

企業からの

「本当のことは言えないんだけど、おまえら気づいてくれよ~」

という切ない声が聞こえてくる。

 

安倍首相が主要な経済団体に採用時期の繰り下げを要請したのが、いまから約2年前。

そして、その要請を経団連の会長が渋々受け入れた(記者会見で容認の意向を示した)のが、2013年4月8日だった。

僕らは、「あ~っ、言っちゃったよ(゜o゜) 知らねーぞ、おい!」と、その記者会見を眺めていた。

すでにその時から、「これは大きな問題になるぞ」と思っていた。

大きな問題とは次のようなことだ。

 

・一部の学生と企業の就職・採用活動は水面下で進行していき、それに気づくことのできない多くの学生は、就職先が決まらぬまま卒業式を迎えるだろう。

・多くの学生の就業意識・職業観は、企業との接触が絶たれることによって、より醸成される機会が少なく(あるいは、とんでもなく遅く)なってしまうだろう。

・多くの中小企業は期間が短縮されることによって、当初の採用予定数を満たすことができなくなるだろう。

・理系の学生にとっては8月1日以降の選考というのはいい迷惑。卒業研究が阻害されてしまう(なので、実際には違うスケジュールでの選考となるだろう)。

 

が、僕らがいくら声をあげても何も変わらなかった。

「変わらなかった」というのには二つの意味がある。

一つ目の意味。

経団連は、「繰り下げ容認」の記者会見の通り、その後、「指針」という名の倫理憲章の改定(3~4か月の採用時期の繰り下げ実施)を打ち出した。政府の圧力もあり、これは誰にも変えることができなかった。

二つ目の意味。

実は2016年の多くの企業の採用活動は「指針」には実質的には従わず、前年とさほどスケジュールを変えずに行われるであろうと思われる。ただし、「水面下では」という前提付きだが……。

割を食うのはすべての企業の採用時期が本当に繰り下げになると無邪気に信じている学生たちだ。

「本当のことは言えないんだけど、おまえら気づいてくれよ~」・・・と、企業は叫びたいのに叫べない。そりゃあ、政府の意向や、組織の掟にはなかなか逆らえないですよね(-_-;)。

 

僕らが学生の頃には、就職協定(学生は4年の10月1日まで企業の人事と接触しちゃダメ、というルール)というのがあったのだけど、企業はそれを公然と破っていた。

僕らはそれを就職活動中に知って「企業は嘘つきだ!」と、さんざん罵っていたこともあったけど、今はそんな企業の嘘をつかざるを得ない事情も分かるので、批判する気にはなれない。

むしろ、守れないルール、学生のためにも世の中のためにもならないようなルールを作って、それを表面的に守らせようとする権力を批判したい。

ということで本日は、2013年の4月9日。当時の経団連会長だった米倉さん(住友化学の会長)に呼びかけたブログを以下、再掲することにしよう。

さて、では権力や大きな組織から圧力がかからないうちにw行ってきます!

新卒採用に関わる仕事をしている人たちの多くは、そう感じていることだろう。

昨日の、経団連・米倉会長の記者会見を受けての話だ。

つい先日(4月3日)の記者団との談話では、「学生の声を聞かないと大きな問題になる」と言っていたそうではないか。それがどうしたことだ。

現場を知らぬ政治家や、視野狭窄な他の経済団体幹部に押し切られてしまったのか?

それとも、この短時間に学生の声を聞いて、「大きな問題にならない」と判断したうえでのことか?

昨夜のNHKの報道では

「『政府から正式に要請があればわれわれも粛々と受け止めて、政府の意向を会員企業に周知徹底していくことになると思う』と述べ、政府から正式に要請があれば経団連としても受け入れる考えを明らかにしました。」

となっている。

確かに、映像で確認しても(前後の発言はカットされているのだが)そのように答えている。

今朝の日経新聞でも、「解禁繰り下げ 経団連が容認姿勢」との見出しがついてしまった。

 

ところが、経団連のホームページ(記者会見における米倉会長発言要旨)を読むと、

「学生に動揺を与えないか、中小企業の採用にどのような影響が生じるかなども考えて検討すべきである。倫理憲章は自主的な取り決めなので、多くの企業が賛同できる内容でなければならない。対応については、政府から正式な要請がきてから検討したい。就職活動期間の短縮化は学生が学業に専念することを目的としているが、そのためには大学も魅力的な授業を行い、学生の学業に対する関心を高めていく必要がある。」

と、かなり慎重な表現に修正されている。「政府の要請を、そう簡単に受け入れるわけにはいかない」というニュアンスで、記者会見の発言とは逆の意味にも受け取れる内容だ。

そう。経団連は、加盟する大手上場企業や、彼らの採用ターゲットであるブランド大学の学生のことだけを考えればよい経済団体ではない。

我が国を支える(労働人口の約70%の雇用をも支える)中小企業や、ブランド大学ではない学校(大学とは限らない)に通っている大多数の若者の将来のことを、あわせて考える責任と、日本全体の経済界・産業界への影響力を有する団体ではないのか?

いまからでも遅くはない。

ホームページの上だけの“ごまかし”の修正ではなく、もういちど記者団の前で正々堂々と、しっかりとした肉声で修正の発言をしてほしい。

そして、現場の(中小企業も含めた)採用担当者の声や、(あなた方の採用ターゲットではない大学も含めた)大学職員や学生の就職指導に携わるキャリアアドバイザーたちの声に、きちんと耳を傾けてみてほしい。「大きな問題になる」ということに気づくはずだ。

あなた方が、本気で日本の大学教育や若者の将来のことを考えているのなら、就職活動時期をこねくり回したり、一律の規制をしたりするのではなく、他にもっとやらねばならぬことがあるはずだ。