パフスタッフが綴る何気ない日常。日々感謝をこめて。「パフ・ザ・マジックドラゴン 執務室」

「就活二次戦線」に備える(2)

2014年2月25日 (火曜日)

<前回までのあらすじ>
1.景気動向指数がリーマンショック前の水準に回復した
2.2015年卒は売り手市場化かと言う報道がなされる
3.学生が例年よりも大手人気企業に集中している
4.企業は採用意欲旺盛も、採用基準を下げることはしない傾向
5.この流れは、2011年卒採用の時に似ている
6.当時は採用人数未達のまま、採用活動を終える企業が続出した
 ※当時のHRプロ社統計によると、34%が採用人数未達。
  うち、未達成でも採用活動を終了した企業は43%
7.同じ轍を踏まぬため、どのような準備が今から必要だろうか

要約するとこれだけなのに、ずいぶん長々と書いてしまいました。反省です…
⇒ http://blog.shokucircle.jp/staff/2014/02/10/3736

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さて、今回はいよいよ
「2015年卒採用、採用成功をするにはどのようにすべきか」
を考えていこうと思います。

 ○その1 初期スクリーニングで落としすぎない
  A.不必要な事前ハードルはなるべく取り除く
  B.内定期間や入社後、努力すれば大丈夫なことは不問にする 
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 ○その2 機械的に内定を出さない「楽勝な会社だ」と思わせない
  C.安易に最終面接の面接に進ませない
  D.安易に内定を出さない 
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 ○その3 「地に足が着いた」学生に見逃さずアプローチ
  F.3月末~GW明けに「学生の役に立つ説明会」を
  G.時期によって選考フローを柔軟に変える
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 ○その1 初期スクリーニングで落としすぎない
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 一般的に、第1クールは一番母集団の質が高いものです。厳しく落としすぎ
 てしまうと、第2クール以降で同じレベルの学生さんを集めるのはどんどん
 困難になってきます。今年は特に、要領のよいどこでも受かる学生に内定が
 集中してしまいそうな気配です。そういう学生はバッティング必至です。
 
 「就活慣れしておらずアピール下手だけど、ウチの仕事や社員には合いそう」
 という学生をどれだけきめ細かくフォローし、且つ選考を通して成長させて
 いくかが、例年より大事になってくると思います。

 【ポイント】
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  A.不必要な物理的なハードルはなるべく取り除く
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  説明会にエントリーシート・履歴書持参という企業様がたくさんあります。
  買い手市場であれば、本気の応募者だけに絞り込むよい手法だと思います。
  
  しかし、放っておいてもたくさん優秀な学生が応募してくる企業でない限
  り今年はこうした物理的ハードルは避けるべきです。自社の志望度が上が
  っていない状態で、ただ物理的なハードルを課すだけでは「なぜあなたの
  会社にそこまで労力を割かないといけないのか」と学生は思ってしまいま
  す。実は会って話をすれば、魅力を感じてくれるかもしれない学生を自ら
  門前払いしているようなものです。

  とはいえ、合わない学生は事前にスクリーニングしておきたいというのも
  事実です。私のお勧めは、物理的ハードルよりも心理的ハードルです。

  Web(採用HP・Web説明会)や会社説明会のような場で「当社はど
  のような人が向いている」ということを学生にもわかりやすく伝えること
  です。具体的には「採用情報の徹底的開示」「説明会のような場では、社
  員との交流や業務体験ワークなどを実施する」ことです。

  きちんと学生に「この会社は自分に合うか」セルフスクリーニングしても
  らえるだけの判断材料を提供すれば、筆記試験やエントリーシート等の双
  方の手間が増える物理的ハードルを増やさずとも、母集団の適性なスクリ
  ーニングが可能です。

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  B.内定期間や入社後、努力すれば大丈夫なことは不問にする
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  マナー、礼儀、面接(オトナと話すことへの)慣れ、自社理解度…
  これらはすべて、内定期間や新入社員研修で鍛えれば済む話です。
  
  現在の採用基準で「選考時にできていること」が本当にどれだけ大事なの
  かを見直してみると良いのではないでしょうか。これだけでも、本当は合
  うかもしれない学生を落としてしまうリスクは減ると思います。

  また「一般的には面接基準と考えられているが、ウチの場合入社後のパフ
  ォーマンスには関係ない」ことは不問にするのも手です。これから面接が
  本格化する前に評価基準を見直してみてはいかがでしょうか。

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 ○その2 機械的に内定を出さない「楽勝な会社だ」と思わせない
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 某大手人材企業では、学生によって面接の回数が違うそうです。学生を口説
 く一方で入社する覚悟がついていない限り、何度でも面接を行うそうです。
 機械的なフローで選考を行い、こちらが一方的に内定を通知するから学生も
 内定を重く受け止めないのではないでしょうか?内定は本来「採用内定」と
 いう事であり、最終選考合格と入社意思の表明が両方成立して初めて内定と
 言えます。この原則に立ち返って学生に対応すべきだと考えます。

 【ポイント】
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  C.安易に最終面接の面接に進ませない
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  企業と学生はお互い選びあうものだ、とよく言われます。もちろん、企業
  は選考に来た学生に、次の選考にも来てほしいか否か選んでいます。
  
  しかし、学生からすると「合格と言うのはわかったが、次の面接に進むか
  否を自分で選ぶのだ」意識的に考えている学生さんばかりではありません。

  「当社は、入社の覚悟がある人しか最終に合格しない」
  「最終面接を受けるかどうかは自分で決めてほしい」
  「もちろん、まだ決められないなら待つ。最終面接の権利も保持する」
  「でも、採用予定数が埋まってしまったら、ごめんなさい」
  
  という風に、覚悟のない学生に最終面接にホイホイ進ませないというのが
  良いと思います。「何人最終に合格させれば、辞退率が○%なので…」と
  いう予想も大事ですが、入社する学生しか内定にしないという本来の言葉
  の意義に立ち返るべきだと考えます。

  ポイントは「あくまで学生にとってもフェア」であることです。

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  D.安易に内定を出さない
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  先ほどと重なりますが、内定は本来「採用内定」で、企業が一方的に「あ
  なたは内定」と言うことが本来おかしいのだと思います。なぜそのような
  習慣になっているのかと言うと「最終面接に合格したらその会社に入るも
  のだ」という古い時代の習慣がそのまま残っているのではと思います。
 
  繰り返しますが、本来最終選考合格と入社意思の表明が両方成立して初め
  て内定です。これを学生にも伝えたほうが良いと思います。

  そのうえで、こう続けます。

  「当社からは内定は出さない」
  「入社するかどうかは自分で決めてほしい」
  「もちろん、決められないなら待つ。内定を自分に出す権利も保持する」
  「でも、採用予定数が埋まってしまったら、ごめんなさい」

  あくまで最終選考合格は最終選考合格であり、内定かどうか=入社するか
  どうかは自分で決めるというスタンスが大事です。

  その後は個別クロージング対応です。

  「そんなこと、自分の会社がよほど人気企業でないとできないのでは」と思わ
  れるかもしれませんが、実はこれ、当社の選考で実施しています。当社は
  BtoCでも人気企業でもありませんが、内定辞退は毎年ありません。

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 ○その3 「地に足が着いた」学生に見逃さずアプローチ
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 大手企業ばかり追いかけていた学生は、3月末~4月中旬にかけて「持ち駒」
 が無くなります。そこでやっと夢が覚め、地に足が着いた就職活動を始める
 方も相当数いると思います。

 では、4月に第一志望の企業群に落ちた学生が全然ダメなのか?というと、
 そんなことは全くないと思います。
 
 ポテンシャルは高いが憧れだけで、全く向いていない企業を受け続けた学生
 もいるでしょう。素質はいいのだが、ただ社会人慣れしていないだけで面接
 でうまく自分をアピールできなかった学生もいるでしょう。

 そこを逃す手はありません。

 【ポイント】
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  F.3月末~GW明けに「学生の役に立つ説明会」を
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  では、持ち駒が無いからと言って、どこでもいいと思っているかと言うと
  そんなことはないでしょう。であれば「この会社に応募する」メリットを
  提示しなければなりません。ただ説明会を開けば勝手に来るかと言うと、
  そうはならないと思います。

  あくまで持ち駒が無い学生にとって「役に立つ」コンテンツを提供するべ
  きです。

  例えば:
  「自分の面接の問題が分かる、模擬面接つき説明会」
  「これから新たな業界を探す人のための、会社の探し方講座」
  「4月で志望業界に落ち、5月からリスタートして就職を決めた経験を持
   つ先輩社員による体験談」

  などではないでしょうか。

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  G.時期によって選考フローを柔軟に変える
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  4月までは、企業の選考はおおむね足並みがそろっていますが、それ以降
  は乱立します。自分の会社が一次面接をやっているときに、他の会社では
  最終面接ということが頻繁に起こります。

  5月以降の選考では「スピード」が重要になります。まさに「拙速を聞く
  も未だに巧みの久しきを見ざるなり」の世界です。

  そこでは、4月までの選考フローを踏襲する必要は全くありません。

  例えば:
  「5月の選考からは、選考フローを一つ減らす」
  「会社説明会とグループディスカッション(or筆記試験)を同時に行う」
  「4月の選考で最終面接に進んだ経験を証明できるものを持参すれば、
   1次面接はパス」
  「1次面接と2次面接を同日に連続して実施する」

  などです。

  ちなみに毎年「他社の内定を持っている方は、いきなり最終面接」という
  類の施策に走る企業様がいらっしゃいます。気持ちはわかりますが、これ
  は道義に悖る行為です。
  
  また「当社の選考を落ちた人で再チャレンジOK!」というのもまま聞か
  れることです。これは、新たな母集団形成が絶望的な状況下では無しでは
  ないですが慎重に行わないと学生の反感を買います。これをやるくらいだ
  ったら、前述AとBを実践し「そもそも落としすぎない」のがお勧めです。

 

「就活二次戦線」に備える(1)

2014年2月10日 (月曜日)

こんにちは。マジックドラゴンの土田です。

いきなり余談ですが、先日弊社の吉川がブログの記事を久々にアップしたとこ
ろ、私のブログとは比べ物にならないほど「いいね!」が集まるという事件が
ありました。(泣)

やはり、大事なのは日ごろの行いや良好な人間関係を築くための人間力なのだ
なと痛感した次第ですが、腐らずに書こうと思っております。

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さて、ついに、選考シーズンも本格化してきました。そして「何やら今年の採
用は波乱がありそうだ」と言う思いを日に日に強くしております。

経団連企業ではエントリーシートや適性検査等いわゆる「プレスクリーニング」
が、非経団連企業ではすでにグループディスカッションや面接等が始まってい
ます。

※ここでいう経団連、非経団連というのは経団連の倫理憲章に則
り選考をしている企業とそれにとらわれずに選考をしている企業と言う程度の
意味で、他意はありません。

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企業の採用担当者様に所感をお聞きすると

・毎年「他にどこの会社を受けているの?」と聞くのだが、今年は明らかに、
 例年バッティングしないような超大手企業の名前ばかりが並んでいる。
 (中堅物流)

・プレスクリーニングに参加している学生のうち、ターゲット校比率が下がっ
 ている。
 (中堅運輸)

・全体的に、選考を受けに来る学生の学歴だけでなく、レベルが下がっている。
 感覚的にだが「この人はいいな」と言う人の割合が下がっている。
 (中堅Sier)

と言うお話を聞きます。

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一方、学生はというと、

・今は志望企業のエントリーシート対策や企業研究に余念がない。
・すでに業界を絞っているので、知らない企業の説明会よりも、志望業界の選
 考やその準備を優先している
・景気が回復し、企業も採用数を増やすということをよく耳にする。チャンス
 が少しでもあるなら有名人気企業を受ける
・ブラック企業には絶対行きたくないので、有名人気企業から受ける

といった具合です。

まだ推測の域を出ないし、感覚的な印象でしかありませんが、明らかにこう言
えそうです。

「学生は去年より早く志望企業を絞っている」
そして「絞っている対象は、去年よりも有名人気企業に偏っている」
※もちろん毎年大なり小なりそうなのですが、より顕著と言う意味です。

そして、いかに景気動向指数がリーマン前の水準に景気が戻ったとはいえ、企
業アンケートを見ても、採用基準は下げないという回答がほとんど。求人倍率
も一気にリーマン前の2.14になるとは考えにくい。

「見せかけの売り手市場」に踊らされ「大手に絞った」学生が、「採用数は少
し増える」とはいえ「質はそこまで妥協しない」大手人気企業に殺到すること
になると言えそうです。

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むむむ。今年は、久々に危険なにおいがしております。
(煽るつもりも無いのですが、私自身弊社の採用担当として危惧しております…)

こんな時は、過去の事実から教訓を抽出し、同じ轍を踏まないようにしたいも
のです。

採用を長く担当されている方なら、記憶に新しい、2011年卒採用。
ちなみに私は当時、新卒入社したばかりの営業でした…

その2011年卒採用では、何が起こったか思い出してみましょう。

あとでわかることですが、2011年卒採用では、前々年2.14、前年1.62だった求
人倍率が一気に1.28に冷え込んだ年でした。

しかし、学生はそんなことは知りません。不景気を煽る報道は多分にありまし
たが、今のように就活が社会問題として大きく騒がれる直前のタイミングでし
た。学生は先輩の「何とかなるよ」という話を信じて売り手時代の就職活動を
していたように思います。リーマン直後の「内定切り」も問題になっていまし
たので「内定切りをしなさそうな信頼できる企業=有名人気企業に行こう」と
言う風潮があったように記憶しています。

一方企業はと言うと、リーマンショックのあおりを受け、採用数減、採用予算
削減の嵐が吹き荒れた年でした。「厳選採用」と言う言葉が躍り始めたのもこ
のころからだったと思います。

つまり、企業側は限られた費用やマンパワーを、厳選された一部の学生に集中
して投下しなくてはいけない状況に陥りました。

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その結果、どうなったか?

「見せかけの売り手市場」に踊らされ「大手に絞った」学生が「夢破れて」、
「4月前後に大量に就活二次戦線に放出される」ことになります。

そして、

「世間的にいい学生」に「内定が集中」したため、企業は内定辞退に苦しむこ
とになりました。

「どこにでも受かる要領のいい学生」は内定をたくさん取得する。一方「見込
みはあるがイマイチ目立たない学生やアピール下手な学生」は、一次戦線では
厳選採用の名の下に落とすことになる。

追加募集をかけても、内定を出せる質の担保ができない。こんなことなら、一
次戦線で落とした「見込みはあるがアピール下手」な学生を上に上げておけば
よかった…

「敗者復活選考」を実施する企業もいました。しかし「見込みはあるがアピー
ル下手」だった学生は、面接に慣れていくうちに企業から内定をもらってすで
に市場から姿を消している…

人数目標未達だが採用活動を終了する企業が相次ぎました。

これに似たことが、2015年卒採用でも起こるのではないか?
というのが私の直感です。

では「必要な人材を必要な数入社してもらい、活躍してもらう」という採用の
ミッションを達成するために、我々にはどのような準備が必要なのでしょうか。

次回、この点について考えてみたいと思います。