三国志に学ぶ人生観9 荀彧
2012年2月15日 (水曜日)
こんにちは、土田です。
———
【荀彧(字:文若)】
若くして「王佐の才」とも称揚され、後漢末の動乱期においては、後漢朝の実
権を握った曹操の下で数々の献策を行い、その覇業を補佐した。しかし、曹操
が後漢朝をないがしろにして自身の栄達を望むようになると、後漢が滅ぶを善
しとしなかったため曹操と対立し、晩年は不遇だった。
wikipedia より
———
先日、岩波書店が「新卒の応募には社員または著者の紹介状が必要」という発
表を行い「縁故採用を堂々と宣言するのか」と一部から反論があり、話題にな
った。
今日紹介する荀彧は、名家の出身で、幅広い人脈を生かし、有能な人物を多く
推挙(要は紹介し、縁故採用)した。
主だった人物だけでも、甥(なのに年上)の荀攸をはじめ戯志才、郭嘉、鍾繇、
陳羣、華歆、司馬懿、杜襲、杜畿、辛毘、王朗ら錚々たるメンバー。
(その後、郭嘉が劉曄を、劉曄が満寵を、満寵が呂虔を推挙するという、いわゆる
「芋づる式」の人材囲い込みが行われた)
荀彧による人材基盤構築なしに曹操の勢力拡大はなかったと言っても過言ではない。
いまなら「縁故採用・悪の枢軸」としてマスコミにたたかれ、小宮山厚生労働相か
ら調査が入るだろう(笑)
———
話はそれるのだが、「縁故採用」(岩波書店のケースが「縁故」に当たるのか
はひとまずおいて)は悪いのか?
小宮山大臣が長をつとめる厚生労働省による「雇用動向調査」には「転職入職
経路の23.4%が『縁故』」だと書いてある。
特に中小企業は、現役従業員から「知り合いでいい人材がいる」という話があ
れば選考を経て採用に至るということが普通にある。
実際、パフグループでも縁故採用をした。マジックドラゴン社の坪内は
当社の社外取締役からの紹介で当社と知り合い、また並木は坪内の元同僚。
(選考上の優遇・ひいきは受けていないが)
中途では、自社に必要な人間を採用する有効な手段として「縁故」は機能している。
どうしてそれが新卒ではいけないのか?
また、現在新卒採用でも、普通に縁故採用はある。
にもかかわらず、あたかも縁故採用がないかのように、
「縁故採用など言語道断!」とウソの平等を謳いつつ、陰で縁故採用を行うよりも、
「ウチは社員の紹介状が必要です」と堂々とオープンにしている方がいいに決まっている。
新卒採用現場の縁故採用とは?
ビッグクライアントの子息令嬢を「人質」として採用する場合もあれば、親会
社の役員の子が、子会社の選考を受けたり(この場合無条件で内定するケース
は最近どんどん減っている)とレベルの違いはある。が、縁故採用は当たり前
に行われている。
教授推薦やリクルーター面談も見方を変えれば縁故採用では?社員の推薦と何
が違うのか?
繰り返しになりますが。
そもそも縁故採用と言うのは「息子を雇ってくれないとお前の会社に発注する
のをやめるぞ」という悪質なものでない限り、企業にとっては「自社に合う」
人材を獲得するのに有効な手段なのだ。(中途・新卒にかかわらず)
自社の従業員や、長年付き合いのある教授・取引先などは「自分の会社
をよく知っている」信頼できる存在である。採用する側としては、「ウチの
こともよく知っているあの人の紹介なら間違いない」という安心感があるの
だ。
立場を濫用したり、権力を笠に着た、悪質なパワハラ系縁故採用と、高い精度
で自社に必要な人材を獲得するための戦略的縁故採用を混同し「縁故採用だ!
キーッ!不平等だ!一律で廃止!」と言う人間の浅はかさには辟易するばかりだ。
———–
荀彧に話を戻す。
曹操勢力の礎を強固にした
荀彧でしたが、後年は曹操に疎まれ、失意のうちに亡くなった。
自殺とも言われる。
「漢王朝を救い、 国家を安定させるために兵を起こした」という荀彧と
「漢王朝から帝位を奪うべく、曹操を魏公として担ぎあげよう」とした
その他大勢の曹操臣下とが対立してしまったのです。
「王佐の才」も、後々トップとビジョンが合わなくなってしまうと、遠ざけら
れ、力を発揮できないまま終わってしまうのですね…
次は、坪内です。
これまでに頂いたコメント
2件コメントがあります
- deerさん
- 土田さん
本当におっしゃる通りです。あくまで手段なのだから目的達成に資する場合に限り、使えば良いだけのことだとおもいます。
それを、口利きそのものが目的になったり、口利きという手段自体が一人歩きし、なんのための口利きなのか?という考えが失われた途端、悪質な縁故採用と化します。すると、目的如何にかかわらず、縁故採用すべてが悪質という論調も出てきます。
最近思うのは、すべての事象がこの道をたどるということです。先取の精神を持つ人が目的遂行のため行った新しい手段が、大衆に受け入れられると必ず目的にすり替わる、目的に摩り替わると多くの矛盾が出てくるので、その事象自体がおかしい、不要なものだという論者がしたり顔で批判するようになる。制度やルールさえ変えれば矛盾が解決するという幻想を抱くようになる。
新卒採用などはまさにその典型だと思います。
縁故採用へのアレルギーが強いのは、大学への裏口入学やら、かつての教員採用に関わる議員の口利きを連想させるからでしょうか。
要は入社後、いかに自分のパフォーマンスを発揮し、社業発展に貢献できるかが勝負なので、入社の経緯は関係ないってなとこですね。