採用力向上に必要なことを考える
2014年3月25日 (火曜日)
こんにちは。マジックドラゴンの土田です。
先日のニュースで、服部泰宏・横浜国立大学准教授が「採用学」なるものを確
立するべく研究を進めていらっしゃる、と言う記事を目にしました。
記事を拝見して、採用学とは「どうしたら採用活動がうまくいくか、体系的な
理論を確立しよう」「採用活動の効果検証方法を確立しよう」という学問であ
ると解釈しました。
我々はともすれば「採用って効果が分かりにくいですよね」というのを隠れ蓑
にして「採用がうまくいくというのはどういうことなのか」「今年の採用活動
は果たしてうまくいったのか」という難しい問いから逃げてしまいがちである
と思います。そこから逃げずに研究をされている服部准教授に深い尊敬の念を
抱かずにはおれません。
採用は確かに、数字で効果が図りにくい。また、景気などの影響を受けやすい。
入社後も研修、配属部署の業務との相性、上司や同僚との相性といった様々な
変数の影響を受ける。なので「採用って効果検証できないよね」「採用って正
解が無いよね」と言うことにしておいた方が楽なのだと思います。
弊社もお客様にアドバイス申し上げる際に「学生に向き合う」「採用活動に真
剣に取り組む」といった「空気語(=何か言っているようで実は何も言ってい
ない言葉」を使っていると深く反省しました。
そこで「ここはひとつ、採用がうまくいくために必要なことを、当社なりに体
系的に言語化してみようではないか」という動きが始まりました。
まだまだ手探りではありますが、下記に述べてみたいと思います。
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●そもそも採用活動のゴールとは?
必要な質の人材に必要な数入社してもらうこと
●そもそも「採用競争力」とは?
採用競争力=企業力×採用担当の能力
●企業力とは?
―企業知名度(学生に就職先候補として認知されている度合いの高さ)
―待遇(給与や福利厚生・研修等の充実度)
→ただし、企業力は一朝一夕に変えることが難しい。
採用競争力を上げるには、必然的に採用担当の能力を向上することが
必要となる。
●採用担当の能力とは?
採用担当の能力は以下の要素に大別される。
(下から第1層~第5層と言う風にピラミッド構造になっているイメージ)
≪第1層:知識≫
・(他社と比べた上での)自社の特徴理解
・(自社の応募者に限らず幅広い層を対象とした)学生の心理・行動理解
≪第2層:マーケティング力≫
・ターゲット学生像を設定する力
・自社の採用市場におけるポジショニングを決定する力
・ターゲット学生が自社に入社するまでのストーリーを作成する力
―ターゲット学生はなぜ自社を就職先として認知するか?
―ターゲット学生はなぜ自社に応募するか?
―ターゲット学生はなぜ自社に入社するか?
≪第3層:プロジェクトマネジメント力≫
・上記ストーリーを現実にするための具体的な、アクションプラン(施策と
スケジュール)を作成する力
・決められた納期どおりにアクションプランを推進する力
・臨機応変にアクションプランを修正・再度作成する力
≪第4層:営業力≫
・採用活動で接する学生の特性、ニーズを正確に把握する力
・その上で自社に合うかを見極める力
・自社に合う学生に対し「自社が他社と比べてなぜ合っているか」
「相手のニーズにどれだけマッチするか」をわかりやすく伝える力
≪第5層:スペシャリティが必要なスキル群≫
・イベント(説明会・グループワーク選考等)企画スキル
・イベント(説明会・グループワーク選考等)運営スキル
・クリエイティブ(デザイン・コピーライティング等)スキル
・事務処理力
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●採用担当の能力向上のために
・第5層は、外部のプロフェッショナルにアウトソースすることが主流
・第4層(会社説明会のプレゼン、面接会場でのアテンド、電話での合否連絡
等)、第3層(業務スケジュール管理と業務品質管理)、第2層(採用活動
の戦略設計)についても、今後アウトソースが進む傾向。
<背景>
景気の変動や、採用活動の時期変更により、かつてないほど頻繁に採用活動
のトレンドが変化する状況が続いている。
また、新卒採用活動は人事のエントリー業務という位置づけの会社が多く、
新卒採用担当は2~3年で担当変更となる。
その状況下で「新卒採用のプロ(第4~2層の能力を持つ人材)を自社で育
てる」事が困難、あるいは合理性が薄いと判断されるケースが多いと考えら
れる。
・第1層:知識がすべてのベースであり、採用活動に関わる外部アウトソーサ
ーに対し、前提情報を的確に伝えるためのキモとなる。ここだけは
アウトソースすることが難しい。
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●採用活動を営業に例えると
・第1層:知識は、(競合商品と比べた)自社商品知識、顧客理解に相当する。
ここが抜けていると、商品力が髙くとも売れない。
・第2~第4層を改善するところにとらわれてしまい、第1層の強化がおろそ
かになるのは「顧客ニーズヒアリングや、他社営業との情報交換は全く行わ
ず、ひたすら営業戦略を立て、スケジュールを作成し、営業ロープレだけを
行っている」ようなものであり、本来目指すべき成果に結びつきにくい。
・第5層を内製化することは、サービス企画書やカタログを自社で手作りする
といった行為に等しい。
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●つまり
・「採用競争力」を構成する要素は、企業力と採用担当の能力であるが、
企業力を個人の意思で一朝一夕に向上させることは比較的難しい。
・したがって「採用競争力」を向上するには、採用担当の能力向上が必要となる
・採用担当の能力向上のためのキモ
-(他社と比べた上での)自社の特徴理解
-(自社の応募者に限らず幅広い層を対象とした)学生の心理・行動理解
以上
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なかなか体系的に言葉で表すというのは難しいですね…
これからもどんどんブラッシュアップしていこうと思います。読者の皆様から
もぜひご意見を賜りたいと思います。
360度会社説明会レビュー
2014年3月10日 (月曜日)
こんにちは。マジックドラゴンの土田です。
弊社の話で恐縮なのですが、先日パフ/マジックドラゴン(以下パフグループ)
の会社説明会を開催しました。
その名も「360度会社説明会」。
当社が「情報を徹底的に開示し、学生と信頼関係を構築したうえでの採用を」
と謳うからには、当社自身が徹底的にそれを体現するような採用活動を行おう、
と言うコンセプトのものと企画されたこの会社説明会。
その内容は「社員はもちろん、すべてのステークホルダーの話が聞ける、360度
全ての角度から会社を理解できる」と言うものになりました。
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そんな会社説明会に参加したのは以下のような顔ぶれ。
・弊社代表(釘崎) 1名
・社員(全部署から) 10名
ここまでは割と普通なのですが・・・
・株主様 2名
・お客様(企業の採用責任者) 3名
・大学キャリアセンター責任者様 1名
・当社のパートナー(協力会社)様 2名
・元社員 4名
司会進行も、パートナーの方にお願いしました。
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コンテンツとしては、以下のような流れでした。
・社員紹介(バラエティ番組のように椅子を並べて行いました)
・社員以外のステークホルダー紹介(同上)
・学生と参加者の質問会
・立食形式の懇親会
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「全てのステークホルダーと話すことで、透明性が高くなる。何より、どこも
こういうことやってないから、面白そうなんでとりあえずやってみましょう」
と言うことで実現したこの企画。
運営上の反省点は多々ありますが、ここで「ぶっちゃけ、すべてのステークホ
ルダーとコミュニケーションをとることで、なにがよいのか?」をしっかり振
り返ってみようと思います。
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<良い点>
一言でいうとRJP(Realistic Job Preview)に尽きると思います。
業務体験こそないものの、第3者から「顧客からどんなことを期待・評価され
ているのか」「どんな人が向いているのか」を客観的に聞けるので、自分がこ
の会社に合うか合わないかは判断しやすいでしょう。
細かく分けると以下になります。
●良い点①:ミスマッチ者のセルフスクリーニング精度が高い
→学生の声「自分は合わないということがはっきりわかりました」
●良い点②:(入社するにしても)入社後のギャップを低減できる
→学生の声 「入社後どんな人と仕事するかが明確にイメージできました」
●良い点③:(参加前からある程度志望度の高い学生に対しては)情報開示をす
ることで、納得感を醸成できる
→学生の声 「志望する理由がはっきりしました」
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<課題>
●課題①:事前にターゲット学生の志望度は上げておく必要あり
ただ単に現状を開示すれば、勝手に志望度が上がるということはありません。
事前にある程度興味を持ってもらう仕掛け、また「これを今日ははっきりさせ
る!」と学生に目的意識を持った状態で参加してもらう仕掛けが必要と感じま
した。
●課題②:事前にミスマッチ者をセルフスクリーニングする仕組みが欲しい
もちろん、学生が「自分には合わないということわかった」と言うことはとて
も貴重なのですが、一方で社内外を巻き込み多大なマンパワーをかけて実施す
るので、できれば「興味はあるが、本当に自分に合うのか確かめたい」という
方が多く参加するということが理想だと感じました。(①と②は似ていますね)
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<結論>
最初の接点ではなく、ある程度選考が進んだ段階で実施するのが望ましい
※あくまで土田の主観です
ただ、そもそもの趣旨である「全てのステークホルダーと話すことで、透明性
が高くなる」と言うのは間違っていなかったと思います。
個人的には、学生の立場で考えたときに「社員(ともすれば採用担当のみ)の
話だけを聞いて、会社を選べ」というのは流石に無理があるのではないかとい
う思いがずっとありました。今回の企画は通説へのアンチテーゼのような性格
が強かったと思います。
一方で、本当に会社を理解したければ
・人事以外の社員に会いに行く(いわゆるOB訪問)
・オフィスを見に行く、社員が利用する飲食店で社員の様子を見てみる
・株を買ってみる
・店舗や商品を利用してみる
・別の会社の人に「●●社は業界内ではどういう立ち位置ですか?」と聞く
・就職課職員や教授に「●●社に就職した先輩はどうなってますか」と聞く
などなど、いくらでも方法があるとは思います。学生が自分で努力すればいい
話なのに、採用活動でわざわざそんな場を作るべきかなのか、と言う議論の余
地はありそうです。
ただ、どうせ一定のお金とマンパワーをかけて採用広報をやるのであれば、人
事や現場社員のみによる「一人称」の話ではなく「三人称」の情報も届けた方
がいいのではないか、と言うのが私の考えです。
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余談ですが、この学生を採用するか否か?に関しても、学生の「一人称」の話
だけを聞いていていいのか、と言う問題意識があります。もちろん現在の採用
活動でも成績証明書や適性検査などを使って「一人称」以外の判断材料を収集
していますが、充分とは言えないでしょう。
OPEN ESの「紹介文」が物議を醸していますが、もっと多角的な判断方
法があってもいい気がします。
「応募者の部活動の様子を見に行く」
「応募者のゼミ発表会を見学する」
「応募者のアルバイト姿を見に行く」
「応募者の親友に面談する」
と言うような感じでしょうか。
(「応募者の部活動の様子を見に行く」は実際やっている企業様がいらっしゃ
り非常に感銘を受けました)
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何にせよ「企業も学生もお互い選びあう」と言うことが当たり前に言われてい
る中で、お互いの判断材料の収集方法(会社説明会然り、選考然り)に何十年
も全く根本的なイノベーションが無いというのがおかしいのだと思います。
私たちも、今後も画期的な採用施策を生み出していくことで、採用活動の常識
に見えるウソを打破していきたいものです。