パフ代表の徒然ブログ「釘さん日記」

僕のマラソン大会デビュー戦は2011年2月だった。振り返りのために、このころの日記をパラパラとめくっていたらマラソンとはまったく関係ないこの記事に目が留まった。

ライフネット生命の出口社長と、就職問題について語り合った日

2011年2月26日に書いている。

このころは、日本の新卒一括採用に対する批判が世論を賑わしており、僕ら業界の中でも日々議論されていた時期。ライフネット生命の出口社長(現在は会長)と出会って意見交換をしていたのもこのころだった。

本日は3月1日。2018年新卒採用が公式に始まる初日でもあるので、マラソンの振り返りはお休みにして、この記事を再掲したいと思う。なかなか釘さん珍しくマジメですよ(笑)。



昨日は、ライフネット生命の出口社長と、昨今何かと問題視されている新卒者の就職・採用に関する意見交換を行なった。

出口社長には、昨年の秋、パフの若手社員向けに講演を行っていただき、その後いっしょに食事をさせていただいたことがある。出口社長は、僕よりも一回り(12歳)上の人生の大先輩。日本の生命保険業界を牽引してこられた、業界の第一人者でもある。つまり、スゴイ人なのである。

昨年の秋、いっしょに食事をしながらお話ししたときの印象を、僕は次のような言葉で日記に残している。

とても、ざっくばらんで竹を割ったような性格の出口社長。難しく複雑な話を、とても分かりやすく、シャープに論じてくださる。僕らは、スッキリさわやかだったのだ。

カッコつけず、偉ぶらず、物腰も柔らかく、でも、悪いものは悪いと、ずばずばとハッキリとした物言いをする。発想は柔軟で、視点と志はものすごく高い。

読み返してみると、我ながらよく表現していると思う^^。

以来、僕はtwitterでも出口社長をフォローさせていただき、日頃どんな発言や行動をされてらっしゃるのか注目するようにしていた(出口社長は精力的に全国を飛び回りながら講演活動をしてらっしゃるのだ)。

数週間前のこと。企業の新卒採用に関しての“つぶやき”を目にした。企業が学生を「青田買い」し、学業を阻害していることに対する批判だ。

出口社長は、「大学生は大学を卒業したのちに就職活動をすべきであり、企業は大学生が学業に勤しんでいる期間は、(採用を前提とした)接触を一切行なうべきではない」という意見を持っておられるのだ。

僕は、そのつぶやきに対して、「僕は少し違う意見を持っているので一度議論したいですね」という、生意気な意見を書き込んだ。

すると、すぐに出口社長から直々にご連絡をいただき、「ぜひお会いしてお話ししましょう」というお誘いをいただいたのだ。

本来ならば僕の方から訪問のお願いを差し上げるべきところを、逆にお誘いいただいてしまった。これだけ多忙で、かつ重要な立場におられる大先輩が、僕ごとき(出口社長から見れば)若輩者の意見に耳を傾けてくださるという。とても恐縮する一方で、とても嬉しく感動した次第だ。

・・・前置きが長くなってしまった。

上のような経緯があって、昨日の午後4時。半蔵門にあるライフネット生命の本社にお邪魔したのだ。

社長室に招かれ、椅子に座るやいなや(余計な時候の挨拶や雑談もなしに)本題の、就職と採用に関する話が始まった。

出口社長は、僕の日記やコラムもちゃんと読んでくださっており(それもまた感動なのだが)、最初の話題はつい先日の「就職人気企業ランキングの愚」に関することだった。この(企業と学生の両方にみられる)愚かさについては、出口社長も同様のご意見であった。

そして話題は、問題の「青田買い」や「採用の早期化」について。

僕も基本的には、日本の(それこそ人気企業ランキングの上位に入るような)大手企業や人気企業が、学生を早期から拘束したり、扇動させたりするようなことがあってはならないと思っている。

しかし一方で、学生にはもっと早い段階から、社会(経済)のことや、業界のことや、企業のことや、働くことを、リアルに知ってほしいと思っているし、その機会を、企業は提供すべきだと思っている。そうすると、学生と企業との接触は、超早期化するわけで、その結果としての「青田買い」が行なわれることも、是としたいと思っている(もちろん、そこには企業の良識が当然求められるわけだが)。

僕は、なにより大切なことは、企業が学生に求めていること(企業で活躍するために必要な、具体的な学力・能力レベル)を明らかにし、大学時代に修めなければならないことをキチンと謳うことだと思っている。そうすることで、学生は、間違った就職活動対策に翻弄されることなく、学問や課外活動にも励めるのではないかと思う。学生が勉強しないのは、必ずしも「青田買い」や「採用の早期化」が原因ではないと思っている。

これに対し、出口社長の意見は、先にあげたとおり、「大学生は大学を卒業したのちに就職活動をすべきであり、企業は大学生が学業に勤しんでいる期間は、(採用を前提とした)接触を一切行なうべきではない」という内容である。

理由も明快で、「大学は学生に勉強をさせるために、国から年間1兆5千億円もの助成を受けているのだから、それを企業が妨害するのは、犯罪に等しい」というものだ。また、「大学は、学力が一定レベルに到達していない学生を卒業させるべきではない」というご意見だ。

そして、「学生の親たちは、(大学卒業後は)子供を家から追い出すべきであり、経済的援助を一切すべきではない。そうする(経済的援助をしない)ことで、子供は食べるために、必死になって(夢や憧れだけではない)足元をみた就職活動を短期間に行なうようになる」というご意見もあった。

まとめると、

●企業は、大学在学中は学生に一切接触しない。採用活動は、学生が卒業したのちに行なうべき。

●大学は、学生にちゃんと勉強させる。勉強のできない(学士としての学力・知識・教養レベルに到達していない)学生を卒業させてはならない。

●そして親は、子供が大学を卒業したあとは(経済的自立を促すために)突き放す。

という内容だ。

たしかにその通りだ。出口社長のご意見に、思わず共感してしまう。

しかし、現実には大学での勉強だけをしていても、社会や企業に適応できない(結局は就職できない)学生もたくさんいる。過保護な親たちに、子供を突き放すことなんて(よほどの強制力がない限り)簡単にはできない。大学も、それ以前の問題(たとえば本来大学生とは呼べない子供を大量に入学させてしまっているなど)を抱えたところが多すぎる。

僕はそのように考え、「現実に、いま取り組める最善のことを我々は行なうべきであり、むしろ企業(社会人)と学生との接点は早期に創りだすべき」という主張をしている。

それに対して、出口社長のご意見はさらに明快だった。

「僕は、あくまで理想論や原則論を主張している。そうじゃなきゃいけないと思っている。一方で、釘崎さんは日々現場に携わっており、理想だけでは済まされない現状をたくさん見ている。だから現実論を展開されて当然。でも、理想や原則を掲げ続ける人がいないと、理想への架け橋(ブリッジ)が危うくなってしまう。理想論と、現実から理想に向けてのブリッジ論が、両方が存在することが望ましいのではないですか?」

なるほど。思わず唸った。

学生の就職と、企業の採用の問題には、なかなか簡単に「ここをこうすればいい」というものがないのだが、「理想の姿」を描き続けることの大切さを、あらためて教えていただいた気がする。

うわ。なんだか、たくさん書きすぎてしまった。

僕の拙い文章力と表現力では、なかなか出口社長の真意が伝わりにくかったと思うが、ぜひまた別の機会をご用意して、多くの企業(経営者や人事責任者)の方々のまえで、自論を語っていただけたらと思う。そして、僕は、いまいちど理想の姿と、現実を理想に近づけるための施策(もちろん正しいビジネスとして成立するもの)を考えていきたいと思う。

出口社長、お忙しいなか、貴重な意見交換の機会をいただき、本当にありがとうございました!!

そうそう、余談をもうひとつだけ。

帰りのエレベーターのところまで出口社長にお見送りいただいたのだが、そのときの丁寧な(僕に対しての)お礼の言葉と深いお辞儀。エレベータが閉まったあとに、ジーンと感動が込み上げてきた。本当にスゴイ人というのは、礼節をもっとも重んじる。相手がどんなに年下の人間であっても、顧客であってもなくても(僕はもちろん顧客ではなく業者なのだが)、ビックリするくらい謙虚で腰が低いものなのだ。



(再掲以上)

いま気がついたけどこの日記、土曜日の朝に書いている。当時は土曜日も日記を書いていたことにビックリした。それはともかく(笑)、こういった議論はとても大事だと、自分の日記を読んで改めて感じた就活スタートの朝なのでした。

では、リクナビやマイナビをチェックした後、いつもどおりウォーキングで行ってきます!