育てる採用を実践している採用責任者と面談した日
2009年5月18日 (月曜日)
僕は持論として、「“切り捨てる採用”から“育てる採用”への転換」ということを昔から言ってきた。
根底にあるのは、【若者は社会共通の財産である】という考え方である。
だから、新卒採用における『母集団』という言葉に寒さを感じてしまう。一人ひとりの「ひと」を軽んじた言葉のように思えるから。「切り捨てる」行為を前提とした言葉のように思えるからである。
この数年間、学生の売り手市場となってきたこともあり、表面上は「切り捨てる」行為が少なくなり、手段としての「育てる」は増えてきたようにも思えた(僕は苦々しく眺めていたが)。
しかし、この不況で、ふたたび「切り捨てる」が横行している。
僕は2週間ほど前のメルマガのコラム(企業の人事担当者や経営者、数千名に配信されている)に、以下のことを書いた。
(前略)
人事担当者が独断で、採用人数を増減させることは難しいかもしれませんが、
少なくとも若者たちの「就職への意欲」を損なわせないようにすることはで
きるはずです。
不採用通知を受け取った若者たちが、「自分は世の中に必要とされていない
人間なんだ」などという馬鹿げた勘違いをさせないようにすることはできる
はずです。
自社の採用の枠組みを越えて、若い人たちに「何とかなってほしい、必ず社
会に出て活躍してほしい」と願う気持ちを伝えることはできるはずです。
将来の日本を支える若い人材が、社会へのスタートラインにさえ着けないと
いう事態を、私たちは絶対に防がなければなりません。
それが「社会の公器」たる企業で働く、私たち先輩社会人が果たすべき義務
なのではないかと考えます。
( 「『企業は社会の公器』であることを忘れて、どげえするんか?」より抜粋)
で、本日。
「若者は社会の共通の財産」であると捉え、「企業は社会の公器」だと自認し、「育てる採用」を実践している、採用責任者と面談した。
この採用責任者が行っていること。
なんと応募者(約400名)全員と、1対1で面接している。しかもその際、事前に受けてもらっている適性検査(足切りで使用しているわけではない)のフィードバックを、一人ひとりに丁寧に行っている。そして、面談結果と適性検査の情報を踏まえて、学生に今後の就職活動に向けてのアドバイスを行っている。
素晴らしい。
一般の学生にはほぼ無名の会社なのだが、このような採用の姿勢が口コミで伝わり、応募者には、「先輩から勧められて来ました」という人が急増しているのだという。
このような姿勢や考え方をもった採用責任者が増えることで、日本はいい国となるはずだ。
「しょせん就職なんて、騙し合い、馬鹿し合いの場だよ」などという若者の諦観を撲滅し、将来に明るい希望をもった若者を増やすことにつながるはずだ。
僕たちも、少しずつ少しずつでいいから、「若者は社会の共通の財産」、「企業は社会の公器」、「育てる採用」というキーワードを、世の中に発信し続けることが大事なのだと、あらためて思った日だった。