パフ代表の徒然ブログ「釘さん日記」

昨日の日記での予告どおり、本日は、「サムライ魂をもった人事マン」から頂戴したメールを転載させていただく。

その前に、一点だけ訂正が。

昨日の日記では、「人事部長」と書いていたが、正式な肩書は「人事部次長」であった。

でも、「人事部長」でもあながち間違いではなかった。なぜならこの方は、会社のなかで最も上位の人事責任者であるからだ。つまり「実質的な人事部長」なのである。

ということで、「実質的な人事部長」である本日の主人公のお名前を明らかにしよう。

その名は「伊藤健一さん」である。

会社は、とある分野に特化した情報サービス事業を営む東証一部上場企業である。30期連続で増収増益を達成している(現在も継続中)の超優良企業だ。

BtoBのビジネスなので、学生にはほとんど知られていないが、企業経営者で知らないという人は誰もいない(もし知らなかったら、そりゃ潜りの経営者だな)。

伊藤さんは、そんな実力派企業の人事責任者なのである。

伊藤さんとパフ(僕)との出会いは8年ほど前だった。以来ずっと『職サークル協賛企業』になってくださっている。

では、この伊藤さんの熱きメールを原文通り、以下転載する。

#読者の皆様にも、ぜひ感想をお寄せいただければと思います。この日記のコメント投稿フォームからでも結構ですし、僕あての私信メールでも結構です。伊藤さんにお伝えしたいと思います。

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私は人事部に異動になったのが平成5年の4月でして、早いものでもう16年が経過し、現在17年目となりました。
新卒採用活動を、今年も含めて17回もやってきたことになります。
(いつまでたっても、何回やってもレベルが上がらず、自分の力量のなさを毎年痛感するのですが、また翌年同じことをやっているという情けない状況です。実は、正直、もう採用活動にはうんざりしているのですが・・・。)
単に長いことやってるだけ、と言えなくもないですが、それでもそれなりには採用活動に対する想い(こだわり)も持てるようになりました。

そんな者からすると、最近(と言うかここ6~7年ぐらい感じていることですが)、世の中の採用担当者は弱くなりましたね。(自分のことを棚に上げていることはお許し下さい)

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強烈に感じるのが、長い期間学生と付き合うことに耐えられないのではないかということ。実に多くの企業が、選考合格後すぐに承諾書を出させて、採用目標人数を確保して活動を終わらせようとしています。
いかに短い期間で終わらせるか、ということに必死になっているような気がします。
学生のことを考えたら、一方的かつ最小限の情報提供だけであとは勝手に選考合格と言っておいて、2週間以内に承諾書出せ、というのはあり得ないですよね。
常識的に考えて、例えば自分が車か何か高額なものを買う場合でも、もう少しいろいろと比較検討するんじゃないでしょうか。そこが分からない担当者が多い。
当社では、最終合格者にその後も自由に就職活動をしてもらう(実質的には9月中旬まで返事を求めません)ようにしています。当社に入社を決めた学生の話を聞くと、「他社からも内定をもらい、もう少し考えたかったのに、すぐに返事しろと言われたので仕方なくその会社は辞退した」と言う学生がけっこう多いです。
ハッキリ言って、待つのは辛いです。ギリギリまで入社予定者数が読めない状況でいるのは精神的に追いつめられます。ですが、こういうやり方に変えてから(もう十数年以上前ですが)歩留まり率は高まりました。
もう少し学生の立場に立って、じっくり待ってあげれば良いのになあと思うのですが、待ってられないのでしょうね。
そうやって、ムリに承諾書を出させた結果、入社後3年で3割辞めていくわけですね。

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最初に世の中の採用担当者を疑ったのは、会社説明会や面接のアウトソーシングが始まったときです。
自分の会社の説明を他人にしてもらう、自分達の同志となれるかどうかという人物の見極めを他人にやってもらう。
どうしても信じられません。その結果、社内にはそういうノウハウを持った人間がいなくなっちゃったんでしょうね。
私ごとですが、人事部に異動して初めての会社説明会の時、とても緊張して、学生に「緊張している人?」と手を挙げさせ、同時に自分も手を挙げていました。説明会場の後ろには上司が座って聞いていて、終わってから、あれはダメ、これもダメ、とダメ出しされたのを今でも覚えています。
自分なりに会社の良いところ、悪いところ、何をどう学生に伝えるか、話し方、身振り手振りまで考えてやってきたつもりです。いろいろと鍛えられました。
採用担当者にとってのそういった場を無くしてしまう、ということも実にもったいないです。

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インターネットを使った採用活動の普及も、採用担当者を弱くした要因だと思っています。
ネットが普及する以前の採用活動・就職活動は、とても手間がかかりました。就職情報誌に会社情報を掲載してもらって、資料請求はがきを受け付け、資料を送り、会社説明会の開催案内はすべてDM(紙)で、説明会の参加申込は電話で受け付け、説明会後の面接の合否連絡及び面接呼び込みもすべて電話で、といったやり方でした。
学生の集まりが悪いので急遽説明会を追加したときに、説明会の案内文を作って2000枚ぐらいコピーして、三つ折りにして封入して、なんていう作業を深夜まで会社に残って一人でやっていたこともありました。
ところがネットでの採用活動はホントに便利です。DMを打つのにしても、文面をつくって、送信対象を検索して送信指定すれば、指定した時間にDMが送信できちゃいますし、会社説明会を追加した際なんかも、すぐに学生に案内できちゃいますからね。申込やキャンセルもクリック一つですし。
決してネットが悪いとは思いませんが、簡単になった分、学生も企業側もとてもお気軽になってしまってあまり深く考えなくてもできるようになったのではないかと思います。
何が何でもこの文面で説明会参加者を集めなかったら、追加した分の説明会はまるっきりムダになる、というような必死さが弱くなったように思います。ネットであれば、反応が弱ければもう一回すぐ送り直せますから。

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人事3年目頃だったでしょうか、ある学生が採用内定の辞退の連絡をしてきました。電話じゃなんだから、一度会社に事情を説明に来なさい、と呼び出しました。ところが、呼び出した日時には学生がやって来ず、その日の夜に電話したら、単に行きたくなかったという理由。それじゃケジメつかないよ、と再度呼び出し日時を決めたら、またその日も来ず。その夜に再度電話したら母親が出て、「息子が電話に出たくない、と言っている」とのこと。事情を話したら父親が出て「就職活動なんてそんなもんじゃないんですか。企業だって約束して何も連絡しないことだってあるでしょ」とのこと。私は絶句して、ようやく「じゃあもう結構です」といって電話を切り、その後、悔しくて涙が止まらず、20分ぐらい机に突っ伏して泣いていたことがあります。(あ、これ前に酔っぱらって話しましたかね?)

何が言いたいかというと、こんな経験、今の採用担当者はしないのかなあ、ということです。うちの人事部内でもあったことなんですが、携帯に電話をかけて「何回電話しても電話に出ません」と。「家に電話したのか?」と聞いたら「してません!」、でしたから。
家に電話して親と話したって良いじゃないですか、それをメールだけで済ませてしまう担当者がいっぱいいるような気がしてなりません。

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全く話は変わるのですが、今朝電車の中で『ハーバードビジネスレビュー』誌(今号は「論語」の特集でした)を読んでいると、「近年、日本のリーダーのレベルがこれほどまでおかしくなってしまったのは、中国古典の素養がなくなったからではないか」という記述がありました。そこを読んでふと気づいたのは、結局「大人」なんじゃないか、ということでした。
昨日も吉川(釘崎注:パフの社員)さんに「最近は颯爽とした学生(とくに男)」がいない、と話したのですが、電車の中を見ると、ゲームやっているオヤジ、漫画読んでるオヤジ、また、ポケットに手を突っ込んで鞄も何も持たずにホームを歩くスーツ姿のオヤジ、などなど(もちろんオバチャンもいるのですが)。
「颯爽とした大人」もいないことに気づきました。これじゃ「今の学生は」なんて言ってらんないですよね。

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長々とくだらないことを書いてしまいましたが、要するに、こういった想いを他社の採用担当者(とくに採用担当になりたての方)なんかにぶつけさせてもらえないでしょうか。
あるいは、担当者同士の想いをぶつけ合う場を作っていただけないでしょうか。(「破壊と創造の会議」がそうなのかもしれませんが、案内だけ拝見するとどうも一方的なような気がしまして)一つの企業の中で「サムライ魂」が引き継がれないのであれば、他の企業の「サムライ魂」を共有していけるような、そんな機会があったらいいのにな、と思いました。(私のは「サムライ魂」ではない、と言われれば黙ってます。ぜひ他の方の「サムライ魂」を共有させて下さい)

どうしても、学生に対する「手取り足取り」的なことには抵抗感があるのですが、大人に対して「もうちょっと考えろ!」というのは、言いたくて仕方がなくなってきました。

とりとめもなく、思ったことを書かせていただきました。今朝、返信しようと思ってから、このメール打つのに5時間ぐらいかかりました。今日は、ほとんど仕事してません(笑)。その割に、ほんとにまとまっていない文章です。お許し下さい。

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転載は以上です。

この熱い文章を読んで何かを感じた方は、ぜひご一報いただけると嬉しいです。

最後に伊藤さん。熱い思いのメール、本当にありがとうございました。また、私のブログへの転載許可(しかも実名で!!)。伊藤さんの立場を考えると、なかなか出来ることではないと思います。それだけでも伊藤さんは立派な「サムライ」だと思いますよ。

これまでに頂いたコメント

4件コメントがあります

  • 某大学4年男子さん

    すばらしい人事担当者の方ですね。素直にそう思います。
    伊藤さんのように「信念」を持って採用活動を行っている
    方がいったい何人いるのでしょうか。
    僕は正直そう多くないのではと就職活動を振り返ってみて
    感じます。
    学生の立場に立って、また熱い思いで採用活動をしている
    伊藤さんのような社会人に僕もなりたいです。
    釘さんブログ、実はかなり見てます!!
    これからも楽しみにしてますね!

  • くぎさんさん

    某大学4年男子くん、コメントありがとう!
    伊藤さんからも、「心ある学生に対しても何らかの影響を与えられたのであれば、こんな嬉しいことはありません」という喜びのコメントを頂きました[E:happy01]。

  • あさひ。さん

    いやいや、「素晴らしい」の一言です。
    これは人事の方だけに限った話ではないとも
    私は思います。
    私の人生、色々職を転々として来ましたが、
    新人教育においても似たようなことがあるんです。
    まず、責任者の朝礼で、
    「今日から新人が入ってくるから、
    何よりもまず辞めさせないように」
    と言ったわけのわからない指示が飛びます。
    さらに自分の担当する部署から新人が辞めれば、
    責任者は「始末書」です。
    あきれて何も言えませんでした。
    仕事を覚えさせることではなく、
    仕事を続けさせることが「新人教育」。
    おかげで新人に対しても厳しく言えない上司と、
    厳しくされないで育ったから、
    仕事の効率が上がらない部下で部署が成り立っていたりするんです。
    だから仕事に対して「熱い」気持ちが何もない、
    システマティックな人間が会社を切りもりしていくんです。
    そういった会社が、
    果たして学生に魅力的に映るんでしょうか?
    それでも就職難な時代だから、
    就職して、波風を立てないように
    残りの人生を費やしていくんでしょうか?
    何だか話がまとまりませんが、
    長い長い人生をかけられるだけの会社に
    出会える学生ってどのくらいいるんでしょうね。
    インターネットを「手段」として使うのは、
    私は賛成です。
    でも、インターネットが「全て」ではないはず。
    パフの「破壊と創造」、
    期待しています。

  • くぎさんさん

    おお、あさひ。気づかないうちに熱いコメントをありがとう!
    そうだね。システマチックな人間が切り盛りしている会社ってイヤだね。多少ドン臭くても、血の通う人間臭さの溢れる会社が繁栄できる世の中であってほしいね。