会社は本当に学業を軽視しているのだろうか?
2018年9月18日 (火曜日)
本日の「釘さん日記」は、一般社団法人 履修履歴活用コンソーシアムがこのほど調査・発表した「2019 年新卒採用における履修履歴活用実態調査結果」をそのまんま掲載しておこうと思う。
手抜きではありませんぞ。コピペして編集するだけでも日頃の日記の倍くらいの時間がかかったのですから(‘ω’)ノ
あ、そうそう。この調査結果の発表を受けて、日本経済新聞社さんが9月14日付の日経産業新聞で記事として取り上げてくださった。感謝であります。
それと、この調査のことをまるで知っていたかのように経団連の中西会長が例の「就活ルール廃止発言」に関連して、
「大学が教育に力を入れ、学生も一生懸命勉強し、経済界もちゃんと勉強した学生を採用することがゴールだ」とし「ルールを早めるとか遅めるだけではないだろうと思っている」
と、日本経済新聞社の記者のインタビューに答えたそうだ(2018/9/13付 日経電子版より)。なんだ、ちゃんと分かってるじゃないか、と胸をなでおろしたものだ。上からの感想で御免なさい(笑)。
では以下、調査結果をブログ用に編集しました。どうぞ最後までご覧ください!
===
2019 年新卒採用における履修履歴活用実態調査結果
このたび履修履歴活用コンソーシアムでは、2019 年新卒採用における履修履歴活用実態(新卒採用における企業の履修履歴の取得・活用状況)調査を、コンソーシアム加盟企業が運営する就職サイトの会員を対象に本年の6月中旬から7月中旬にかけて実施いたしました。
この調査は昨年に続いて 2 回目の実施となります。今回は、2000 人を超える学生から回答を得ることができました(昨年は約 1500 名の回答)。
その内容を昨年の結果との比較を交え、以下ご報告いたします。
なお、本調査では、「履修履歴を活用していた企業名」を尋ねております。名前が挙がった企業も、あわせて公表させていただきます。
2019 年新卒採用における履修履歴活用実態調査概要
■調査実施者:一般社団法人履修履歴活用コンシーアム
■実施期間:2018 年 6 月 15 日~2018 年 7 月 15 日
■調査対象:2019 年卒業予定の全国大学4年生及び院2年生
■調査方法:E メールにてアンケートへの回答を依頼。学生は Web 上のアンケートフォームより入力
■回答数:2,141 名
/
「選考時、学業を重視していると感じる企業がある」との回答が増加
「採用選考において、学業を重視していると感じた企業がどのくらいあったか」という質問をおこなった。
昨年度 18 年調査では「なし~1 割程度」が約 8 割と大多数だったが、今年度 19 年調査では、「2~3 割程度」「5 割程度」「6~7 割程度」「8 割以上」の回答をする学生が増えており、選考時に学業を重視している企業が増加傾向にあるのではないかと予想される。
学業を重視していると感じた理由は「面接で研究・ゼミ以外の履修科目や授業について、具体的に質問されたから」がトップ。
昨年は「選考初期段階で履修履歴の提出を求められた」がトップだった。いままでは、履修履歴の提出をさせるだけに留まっていた企業も、履修科目や授業などの質問を交えた面接をおこなう企業も増えているのではないか。
なお、学業を重視していると感じなかった理由は、「面接で研究・ゼミについての質問はあったが、それ以外の履修科目や授業について具体的な質問がなかった」となっている。
履修履歴や成績証明書を提出させただけでは、学業を重視していると学生が認識しないことがわかる。
調査では、重視していると思った理由・重視していると感じなかった理由を自由記述で回答してもらっている。その中で印象的だったものは「学業に対する学生の姿勢や考え方から、その人の人柄を読み取っているように感じた」というもの。
また、「学業への取り組み方・プロセス=仕事への取り組み方・プロセスとして評価されているのでは」と回答する学生も複数名いた。
学生の本分は学業、評価されたい。履修履歴や成績などを採用選考に用いる方法には疑問
「面接で、学業のことを聞いてくれる企業の印象は良いですか?」という質問をおこなった。
「はい」と回答した学生は約半数の 45.7%。その理由で多くみられたものは「学生の本分は学業であり、その姿を見てくれる(評価してくれる)から」。
同様の内容は昨年のアンケート回答にもあった。後述するが、学生は多くの時間を授業をはじめとする学業に時間を費やしている。
その状況の中、学業に注目した採用選考をおこなう企業に、多くの学生は良い印象を抱いていることがうかがえる。
「どちらでもない」「いいえ」と回答した学生もいる。その理由には「楽に取れる単位かどうかも理解せず、履修履歴や成績を評価されても」「大学・教授ごとに成績の付け方は異なるので、単純に数字やアルファベットのみで比較されたくない」というものが散見された。
つまり、履修履歴や成績などの指標が採用選考に用いられる方法について、疑問を抱いているようだ。
ちなみに、前年度調査では同項目の質問を「学業と学業以外の両面から質問する企業の印象は良いか?」という質問だったが「はい」という回答が 72.9%だった。
本年度調査では「学業のことを聞いてくれる企業の印象は良いか?」とストレートな質問に変更したのだが、「はい」と「どちらでもない」がほぼ半々となった。学業だけウェイトを置いて質問されるよりも、学業と学業外の両サイドから質問をした方が学生の印象はより良いようだ。
「企業が面接で、学業に関する質問を積極的にすると、学生の学業への向き合い方は変わると思いますか?」という質問には、5 割強の学生が「はい」と回答。これは前年度調査から変わっていない。
「学業に対する質問を通して、入社後の仕事に対してどう向き合うのかを見られているとわかれば、学業への向き合い方は変わる」「付け焼刃の志望動機を評価されるよりも、就活前までの 3 年間の積み重ねを評価してもらった方いい。そのことがわかれば学生は変わる」という理由が挙げられた。
「就活のために授業を受けるようになれば本末転倒」という声も
今回の調査結果を通して、「学生の本分は学業」と学生自身が捉えていることがうかがえる。ただし、そこから学業を就職活動に繋げることに対しては、ポジティブな層とネガティブな層に分かれている。実際、「何を履修するかは個人の問題であり干渉されたくはない」という意見もあった。
「面接時=4 年次に質問されても既に必要単位は取得済みのため意味がない」という回答も複数あった。
この意見は確かで、若年層(1~2年次の学生)への働きかけや情報発信が重要である。「企業は学生の学業に注視している」「学業の取り組み方・向き合い方は、社会へ出てからの仕事での取り組み方・向き合い方と通ずるものがある」ということを、就職活動が始まる前から伝えていき、学業への取り組み方に変化を与えていくことが必要だ。
授業に時間を費やしているだけでない。課外活動より学業に力を入れているー学生のイマ
前年度に引き続き「授業にどの程度出席していたか」の調査をおこなった。多くの学生が8割以上の授業に出席している現状だ。
授業をただ受けているだけなのではないか、という懸念から、今年度は、新しい設問を設けてみた。
「学業にどの程度力を入れて取り組んできたか」という質問と、「学業が、その他学業外の活動の中で、学生生活の中でどのくらい重要か、1位から4位の順位をつけてもらうというもの。
これらの結果から、決して授業に時間を費やしているだけではなく、学業に力を入れてきた学生のイマが感じられる。
調査まとめ
学生の多くは授業に 8 割以上出席し、学業へのウェイトもかなり高めな学生生活を送っており、その学生たちが採用時にもっと学業に注目してほしい、重視してほしい、と考えるのは自然な流れである。
ただ、「企業は学業を重視しない」という先入観を抱き、就職活動に臨んでいるため、サークルや部活など学業以外のことを自己 PR のネタにする学生が多い。そしてその自己 PR は懸命に練られ、盛りに盛られたものだったりもする。
企業側は僅かずつではあるが学業に注目した採用選考をおこないつつある。学業を重視している企業に出会い、「聞いていた話と違う!」と、面接で失敗してしまった話もアンケートには複数記載されていた。
学生の学びへの意欲は決して失われているわけではない。「勉強する姿勢は社会に出てからも重要だと思う」という学生の声がある。「就職活動期間が実質長期化していることで、学業に割ける時間が減っていること」への不満もアンケートでは多くみられた。
「学びたい」という学生の意欲と過程を企業側も評価する。「学業への取り組みを積極的に評価している」という採用スタンスを学生に発信し、「就活では学業は重視されない」という学生の先入観を壊していくことが大事なのではないか。
なお、本調査は、2020 年新卒採用の選考終了時期にも実施し、公表していく。
※本アンケート結果の全データは下記よりご覧いただけます。
◆アンケート結果
https://risyu-katsu.jp/2019enq20180903.pdf
◆アンケート結果/履修履歴の提出を、選考の早期段階で求めていた企業名一覧
https://risyu-katsu.jp/reports2019company/
履修履歴活用コンソーシアムについて
2017年7月、全国各地域の就職・採用支援事業者で構成された団体です。2018 年6月 1 日より一般社団法人に移行いたしました。
<設立趣旨>(ホームページ http://risyu-katsu.jp/found/ より抜粋)
【学生の「学び」と、卒業後の「働く」をつなぐ架け橋として】
日本の新卒採用のシーンでは、「学生がどのような考えや価値観に基づいて学業に取り組んできたか」ということ(=履修履歴)に対して興味を持たれることが、今までほとんどありませんでした。それが結果として、「就活が始まると学生が授業に出なくなる」という現象に繋がり、「企業の採用活動は学業を阻害している」との批判を招く一因にもなっていました。
私たちは、かかる状況を改善していくことを目的に、「履修履歴活用コンソーシアム」を設立いたしました。
本コンソーシアムでは、企業の採用担当者の皆様に、学生の“学業への取り組み”に対する関心を高めていただくための仕組みを開発・提供するとともに、世の中全体へのPR活動を行ってまいります。
企業が“学業”への関心を高めることによって、学生の「学ぶ意欲」が醸成され、結果として社会で活躍するより多くの人材が大学をはじめとする、すべての高等教育機関から多数輩出される世の中になることを願っております。
【本リリースに関するお問い合わせ先】
一般社団法人履修履歴活用コンソーシアム
運営事務局 事務局長(株式会社パフ)保坂光江
電話 03-5215-7807 FAX 03-5215-8222
e-mail infoあっとrisyu-katsu.jp
===
以上、本日の日記は履修履歴活用コンソーシアムが先日発表したリリース文章を転載させてもらいました。
なお、本コンソーシアムには現在、マイナビさんやディスコさんを始めとする全国各地の就職情報メディア会社にご参画いただいているのだが、もっともっとたくさんの新卒向け事業者のみなさんに参画していただき、社会への発信力を強めていきたいと思っている。
メディア会社はもちろんのこと、パフのような採用コンサルティング会社、RPO(リクルーティング・プロセス・アウトソーシング)事業を行っている会社、適性検査を提供している会社などなど、多くの新卒採用関連事業を行っておられる皆さんに仲間になっていただけると嬉しい。
関心のある方のところには僕が直接お邪魔しますので、ぜひ話を聞いてやってください。同業のみなさん、どうぞよろしくお願いいたします!
さてと。本日は夕方から、築地でお寿司を食べながら書籍執筆の追い込みミーティングだ。
では夜を楽しみにしながら、行ってきます!