パフ代表の徒然ブログ「釘さん日記」

キヤノンマーケティングジャパンという会社が、2011年度の採用計画を固められず、採用選考の時期を8月に延期するという。

理由は業績不振のため。つまり、2011年度の新卒採用が出来るかどうか(経営者がGOを出すかどうか)がはっきりしないため。

まあ、時節柄どこにでもある話で、珍しいことではない。パフの取引先でも何社もある。

でも、同社の今回のこと(採用できるかどうか分からないので採用時期を延期するということ)がいま、多くの採用に携わる人たちや学生の間で話題になっているのだという。

このことを逆手に取ったリクナビへの(かなり高額なコストをかけていると思われる)広告や、同社のホームページでのカッコイイ告知(お世辞抜きで、なかなか練れた名文だと思うが、URLを見ると採用アウトソーシング会社のサーバーのようだ)が原因だ。

しかもそのカッコイイ名文には、ただ単に「延期のお知らせ」を載せるだけではなく、「そもそも採用の早期化っておかしいと思ってたんだよねー」とか、「そもそも企業がやってる4月の選考っていうのは学生の勉強の妨げだったんだよねー」なんてことを載せちゃうものだから物議を醸す。

純粋で真っ正直な人たちは(批判力を失った一部マスコミも)、

「よくぞ言ってくれた。立派だと思います」

とか、

「勇気のある決断ですね!ほかの会社にも広がっていけばいいですね」

と評価している。

でも、僕らこの業界の裏側を熟知している人間にとっては、ちょっと複雑だ。

僕個人の感想を言わせてもらえれば、

「仰っていることは正論だけど、ずいぶんと小賢しい手法をとりましたね。売り手市場のときに同じことを言ってくれれば骨太の発言だと評価できるんですが、自分たちが採りたくても採れない状況になってからこんなふうに言うのは、新卒採用の舞台裏を熟知した人たちからは、 『正義ヅラした卑怯者』 っていう誹りを受けてもしょうがないんじゃないですか?」

ということになる。

誤解がないように弁護しておくが、同社の採った手法は、戦略的だし、効果的だし、悪いことだとも思わない。

ただ個人的には面白くないし好きではない、という話だ。

だから、(こうやって話題にすること自体、この会社の戦略を応援することになるので)無視しようかと思っていた。

でも、パフが運営しているSNSでも、無邪気な学生たちが「立派な会社ですね」とか「すごいですね」と評価しはじめていたので、裏側を知っている人間のひとりとして、黙っておれなくなった。

常見陽平さんも自分のブログで、3回にわたってこの話題に触れている。

キヤノンマーケティングジャパンという茶番劇

続・キヤノンマーケティングジャパンの茶番劇 議論の「前提」をどうするか?

新・キヤノンマーケティングジャパンという茶番劇 エントリー絶賛継続中!

常見さんらしい切り口での論評である。

 

パフが運営するSNSでは、同社を讃える書きこみが続いていたので、僕は常見さんの論評に助けを借りて、次の横やりを入れた。

—–

常見陽平さんもブログで取り上げているね。こういう解釈もあるっていうことで。
http://blog.livedoor.jp/yoheitsunemi/archives/50951158.html

まあ、この会社の今回のやり方を、上手とみるか、苦肉の策とみるか、姑息とみるか、無意味とみるか……。

結果として一石は投じたのは確かだけど、僕はこの会社のことを立派だとは思えないなあ。宣言文も、いかにもプロ(コピーライター)が作った台詞で気持ち悪いし。

これも、人それぞれの解釈の仕方しだいですね。

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ぼくのこの横やりを受けて、大手人材某社で働くUさん(元パフの社員)が次のように論じてくれた(本人の了解をもらって転載します)。

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常見さんのブログ、拝見しました。

私なりにまとめると、この会社が今回行ったのは以下のとおりですね。
①採用時期を春にはしないことを決断した。
②そのことをこのような形(リクナビを利用したり、置いているサイトもドメインを見ると別の採用コンサルティング会社のサーバだったり)で告知した。
③引き続きエントリー受付は実施している。

で、私が評価しているのは主に①のポイント(+②のリクナビという訴えたい層に一番確実に響くメディアを選択した、という戦略)、 釘崎さんや常見さんが違和感を覚えているのは②③のポイント、とういことだと理解しています。

で、私としてはこの会社が①のような決断を下したときに、②③のようにこれにより自社のブランディングを行い、まだ経験したことがない状況の中でどう転がっても採用が失敗しないようなリスクヘッジをしておくことは、当たり前だと思います。

これらをしなかった場合の
 ②´ 採用スケジュールについては特に告知しない
    (もしくはひっそりとエントリー者にだけ告知する)
 ③´ 夏採用を行うことにした場合、ここまでの母集団を捨てて
    (orここまでのエントリー者は何らかの方法でフォローしながら)
    4月から新しく選考に向けた母集団形成を開始する
というような選択肢については、なかなかとりにくいのではないかと。。。
(きちんと選択肢洗い出してプロスコンス整理したわけではないですが・・・)

仮にも「マーケティング」と社名に謳う会社なので、このような戦略にしたことは、採用だけではなく自社のビジネスにも効果的、という計算をきちんとしたのではないかなーと推測します。
ビジネスマンのあり方として、個人的には賛成です(笑)。

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ということで、僕のような感情面での「面白い・面白くない」「好き・嫌い」ではなく、「ビジネスとして賛成」という意見だ。その通り、ビジネスとしてみれば、とってしかるべき手段なのである。

で、僕は何が言いたいのかというと、「同社がとった今回の手法は(個人的感情として)面白くないし好きではない」ということと、「学生諸君は、大人の表の顔と裏の顔を、ちゃんと見分ける目を養ったほうが良いよ」ということだ。

 

最後に、同社の採用担当者の皆さんにも激励のメッセージを……。

勇気を持って宣言したことなのですから、決して後戻りはしないでくださいね。少なくとも学生の就職環境が好転するときまで(つまり、企業が再び採用難になるときまで)、この主張を貫き通してほしいです。キヤノングループ各社にも影響を及ぼしてほしいです。本当に世の中の就職や採用のことを考えたものであってほしいです。そうすれば僕も、無邪気な学生たちと同様、貴社のことを称賛&尊敬したいと思います。僕らのような、貴社の業績に責任を持たない者の好き勝手な意見に惑わされることなく、正しいと信じた道を(それが本当に正義と信じるのなら)まっすぐとお進みください。健闘をお祈りしています。

 

#読者の皆さんも、遠慮なくご意見のコメント投稿をお願いします。

これまでに頂いたコメント

3件コメントがあります

  • (株)揚羽 手塚伸弥さん

    釘崎様
    はじめまして。blog拝見させて頂きました。
    手塚と申します。
    私も採用系ツール制作会社で働いている者です。
    今回のCMJ様の広告に関しては、私も複雑な
    気持ちで眺めておりました。
    企業が採用を停止する・様子見をするという
    宣言をすることに関しては、正直な実情を
    学生さんに提示することには好感を持てます。
    しかしそこを、就職・採用業務の早期化へ
    警鐘を鳴らしているという大義にまで
    持ち上げたことに関して、いささか
    飛躍しすぎな感を持ちました。
    また、このコピーは、
    人事担当者様が考えて書き連ねたという体裁。
    ですが、実際はきっと私と同様の企業の
    コピーライターが書いたのではないかと。
    私もコピーを書きますが、単純に酔ってしまった
    ようなコピーにしか感じられなかったあたりも、
    居心地の悪さを感じました。
    それでも学生には好意的に迎えられていると
    いうお話は、ちょっと怖くもあり。
    作り手として、学生への情報提示の際、
    「子ども扱いしない※用語は除く」
    「本気で伝えるべきことを伝えていく」ことを
    念頭に置いていますし、企業様にもそのように
    伝えることが多いのですが、軌道修正を
    検討すべき事象なのかもしれないとも感じてしまいました。
    長々と思いついた内容を書き連ね、
    大変申し訳ございません。
    考えるきっかけを頂戴できたことを
    感謝申し上げます。ありがとうございました。
    今後もblog楽しみにしております。

  • junさん

    CMJのメッセージに対する学生さんの受け止め方について
    私は都内某大学のキャリアセンターに勤務する者ですが、私どもの現場においては、今のところ学生さんからこの件について話題・意見等聞くことはありません。
    一部スタッフの間で、世間話程度には口にすることがあった、という程度のインパクトです。
    企業様の意図として、通常のスケジュールであれば確保できていたであろう母集団を、今回のようなメッセージを打ち出すことによって少しでもつなぎ止めたい、というお考えがあるのでしょうか。
    今の学生さんの傾向として、シニカルな見方をするよりは、素直にメッセージを受け止める人が多いかな、と思いますが、それでも、夏休み前には、みんな就職を決めたいというのが本音じゃないかな、とも思います。
    それでも、これがきっかけとなって、採用活動を後ろ倒しにすることが流行ったりすると、現在の就職活動の状況から考えると喜ばしい傾向とも言えます。
    私自身は、できるかどうかは別として、大学生が卒業してから採用活動が始まるスケジュールが始まるという世の中になれば、学生は卒論をもっと書くだろうし(4年間通してもっと勉強するだろうし)、クラブサークルにももっと身を入れる結果となって人間的にももっと大人の状態で就職活動に臨むことになると思われるので、学生・企業・大学3方にメリットがあるという考えですが・・・。
    (その時就職情報会社&採用コンサルの利益をどう担保するか、事実上禁止不可能な青田刈りをどう軟着陸させるかが問題ですが)

  • くぎさんさん

    手塚さま、Junさま。貴重なご意見をありがとうございました。
    >手塚さま
    コピーライターが仕事で書いた文書って、やっぱり読んだらすぐばれちゃいますよね。なんだろうなぁ。真の言霊がやっぱり欠けてるような…。CMJさんの場合はおまけにフラッシュまで使うものだから、胡散臭く思えてしまうんですよね。もったいないですね。
    >Junさま
    仰るとおり!
    僕も企業の4月入社という時期を「10月入社」に変えるだけで、ずいぶんと就職と採用が変わってくると常々思っています。企業にとって都合のよい「一括定期採用」を変えることなく多くの問題の解決につながるかも。まずは学生に大きな影響力を持つ会社、たとえばメガバンクあたりが変えると面白いんですが、保守的な方々が多い業界なので無理かなあ…。