本物の役者はスゴイと思った日
2009年1月25日 (日曜日)
僕は、ドラマとか映画とか好んで観るほうだ。平日は時間がないためほとんど観ることができないのだが、日曜日は映画館に行ったり、テレビの前に座っている時間が長い。
しかし、最近の映画やドラマで、「これはいい!」と思えるものは少なくなったように思う。いろいろ原因はあるのだろうが、視聴率や観客動員数を稼ぐために、演技が下手くそなアイドルたちを主役級に抜擢することに原因のひとつがあるように思う。
そんななか、最近のドラマの中で凄い!と思ったことをひとつ。
今年の年末から3年間に渡って放送される予定のNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」。ご存じ、司馬遼太郎の小説が原作となっている。
このドラマのなかで、正岡子規を演じている香川照之が凄い。まだ放映になっていないので、ニュースで知っただけなのだが、思わず感動してしまった。
正岡子規は、大学(帝国大学)に入学したころから結核を患い、34歳という若さでこの世を去ることになる。短い生涯のなかで、日本の近代文学に多大なる足跡を残した偉大な俳人である。
晩年は、寝た切りになりながらも(背中に穴があき膿が出るほどだったらしい)、詩や俳句を書き続け、後輩たちの指導を続けたという。体は痩せこけ、ボロボロになりながらも、自分の使命を全うした。
そんな正岡子規の壮絶な晩年を、つい先日、香川照之が演じきった。
香川照之は、この役を演じるために、体重を16Kgも落としたという。
彼は決して太っていたわけではない。花王のヘルシアのCMで見かける彼も、中肉中背で均整のとれた体型である。その彼が16Kgもの減量。死にゆく正岡子規を演じるためには、そこまでの減量が必要だと考えたのだ。共演者の話を聞くと、頬は痩せこけ、背中の骨は浮き出ていたという。まさに命をかけた行為だったのだ。
香川照之は、「少しでも正岡子規に失礼のないように演じたかった」と言っている。
役者魂もここまでくればあっぱれ。そんじょそこらのアイドル俳優には、とても真似のできることではない。
そういえば、このドラマでは、正岡子規の親友で、日露戦争で活躍した日本海軍名参謀である秋山真之を、本木雅弘が演じている。本木雅弘といえば、まさに元アイドル(シブがき隊のモッくん)ではあるのだが、立派な本格俳優に脱皮しているので、アイドル俳優も馬鹿にはできないか……。しかも、本木雅弘が主役を演じている映画「おくりびと」は、なんとアメリカのアカデミー賞にノミネートされているし。
脈絡なく書いてしまったが、何しろ、本物の役者は凄いっていう話だ。僕らに感動を与えてくれる演技を、これからも、ますます見せてほしい。そして、制作者であるテレビ局や映画会社は、目先の視聴率や観客動員数に左右されることのない、本物の作品を生み出すべく努力してほしい。かつての『北の国から』に匹敵するようなドラマは、ここ20数年間、生み出されていないように思う。
先に書いた『坂の上の雲』は、今年の12月下旬から放送が始まる。大河ドラマ以上に力の入ったNHKスペシャルドラマ。どんな仕上がりになるのか。いまからとても楽しみである。