書評でも書こう(『みんなで変える日本の新卒採用・就職』)
2014年6月12日 (木曜日)
本日の早朝、東京駅に向かう寸前に予告した通り、移動の合間に書評を書いてみる。
僕は書籍の評論って、考えてみたらいままで書いたことがない。お勧めの本を紹介することはあるけれど、評論なんて柄じゃないし、人の著書のことをあれこれ言うほど自分の知識や経験が十分あるとは思っていないからだ。
というわけで、ここから書くことは書評ではなく、たんなる読書感想文。それから、この本に触発されて湧き出てきた自分自身の考えとして、全国数十万人の「釘さん日記」の読者の皆さんには読んでいただければと思う。
あらためて、ご紹介する書籍は、これ。
「みんなで変える日本の新卒採用・就職 ~不毛な就活、採活を撲滅する~」 (発行:HRプロ)
著者は、HRプロ社長の寺澤康介さんだ。
最初にお断りしておくと、僕と寺澤さんとは、同年代(ちょいと僕のほうが先輩だけど)の飲み友達。仲良くなったのは、寺澤さんがHRプロを創業したばかりの頃だけど、寺澤さんは僕のことをずっと前からご存じだったみたいだし、僕も(それが寺澤さんだとは知らなかったけど)就職ナビの先駆けでもあった文化放送ブレーン社(邪な投資家やベンチャー起業家たちに翻弄され現在は消滅してしまった)のインターネット事業の責任者として注目していた。寺澤さんが生み出したばかりの頃の就職サイトは、他の就職ナビとは一線を画しており、文化放送ブレーンがもし健全な状態で存続していたら、いまの就職情報業界の勢力図も、かなり変わっていたかもしれない。
そんな寺澤さんなので、同年代の親父としても、飲んべ仲間としても、事業家としても、僕はとてもリスペクトしている。今回のこの書籍を読んでも、違和感をもったりイマイチと思う部分は、まったくない。
ただ、ほんとうに読んでもらいたい人には読んでもらえないかな~……、いや、読んだとしても「フン」とあしらわれたり、理解してもらえないかなと、正直思った。
ほんとうに読んでもらいたい人というのは、日本の就活や採活を不毛な状態にしてしまった、大手就職情報会社の事業責任者や、経済団体のお偉方や、政府のお偉方や、彼らに(なぜだか)影響を与えている識者たち。いや、あしらったり、理解できないくらいなら読んでもらわないほうがいいのかもしれない。
そんななか、僕がこの本をいちばん読んでほしい人。それは、就活生の(あるいはこれから就活生となる子供を持った)親御さんたち。それから、就活を始める前の学生たちだ。あ、加えて、超大手人気企業以外の採用担当者の皆さんと超上位校以外の大学教職員の皆さんにも読んでもらいたい。
この本の中で最も秀逸なのは、「第五章 長男と長女の就職活動」だ。
学生諸君は、ここを読むだけで、たぶん就活の捉え方が変わってくると思う。就職支援業者や似非キャリアコンサルタントや似非カウンセラーが仕掛けてくる「シューカツ対策」に翻弄されずに済む。親御さんや大学も、誤った子供への接し方や指導をせずに済む。
僕はリアルタイムで寺澤さんの娘さんや息子さんの就職活動のことを聞いていたし、寺澤さんの父親としての接し方も聞いていた。娘さんは、大学3年生のとき「お父さんから勧められて」という理由でパフのイベントに足を運んでくれ、僕も何度か会話したことがある。
きっと、娘さんも息子さんも、納得のいく就職活動ができるだろうし、社会人として最高のスタートを切ることができるだろうと思っていた。寺澤さんが自信をもって自分のお子さんたちのこと書いているのをみて、とても嬉しくなった。
「第四章 実行すべき解決策」も、具体的な提言ばかりで、企業にも大学にも学生にも、実行してもらいたいことが端的に書かれている。
ただ、実行するためには少しばかりの「勇気」が必要だろうと思う。
考えてみれば、日本の就職と採用を不毛な状態にしているのは、大人たちの勇気の足りなさである。勇気というのは、「他者(社)から批判、非難されても、それが正しいと思うのならば、やってみる勇気」ということだ。「お話は分かるんですけどね。それができれば理想なんですけどね。現実を考えると難しいんですよ、ははは(乾いた笑い)」といって、何も変えることのできない大人たち。経団連だって、最初は今回の採用活動の後ろ倒しには抵抗していたくせに、最後は安倍政権に屈した形だ。そのことが産業界や大学・学生に大きな混乱をもたらすことは十分予想していたはずなのに。
細井平洲が、米沢藩主としてお国入りする上杉鷹山に与えた言葉がある。それは、「勇〈ゆう〉なるかな勇なるかな、勇にあらずして何〈なに〉をもって行なわんや」という言葉。上杉鷹山がその後成し遂げた藩政改革は、歴史の教科書でも皆さんご存知の通り。
現場を知らない政治家や識者の言うがままに就職や採用を弄ばれてしまっていいのか。大学も企業も、勇気をもって改革に取り組んでほしい。そのためにも寺澤さんの提言に耳を傾けてもらえたらと思う。
おっと。次のところにそろそろ移動しなければならない時間なので、ここらへんで終わりにするが、この「書評」を書いていて、また近々、寺澤さんとお酒を飲んで語り明かしたくなった釘さんでした(^^ゞ
最後に寺澤さん、執筆どうもお疲れ様でした。誤植をみつけたので、次に飲んだ時、こっそりお知らせしますね(^_-)-☆
では、次の場所に(なんと大学時代の恩師にご接待していただくのですが)行ってきます!