経済同友会の提言にしびれた日
2009年2月3日 (火曜日)
経済同友会のことを知らない人はいないと思う。(念のため、知らない人はこちらをどうぞ。⇒ http://www.doyukai.or.jp/about/ )
他の経済団体とは一線を画し、経営者としての高い志を(特に終戦後から高度成長期においては)見せてくれた団体である。(もちろん僕が生まれていないか、ガキんちょの頃の話なのでリアルには存じ上げないが)「企業」というよりは、経営者「個人」として、企業や業界のしがらみに囚われない議論や提言を行なっていた団体であると認識している。
その経済同友会の副代表幹事に、小林いずみさんという方がいらっしゃる。メリルリンチ日本証券の社長から、最近、世界銀行多数国間投資保証機関長官という要職に就いた方である。名前から分かるように女性である。しかも僕と同年代。他の同友会幹事と比べると、ひと回り以上も若い。実は3年ほど前より、とあるNPOの総会で年に一回お会いし、一緒にミーティングを行なっているのだが、大きな組織のリーダーという重々しい雰囲気は一切なく、とても話しやすい、フレンドリーな方である。学生時代に同じクラスだったとしたら、まず間違いなく惚れていたと思う。
本日、出勤する間際に、着替えながらNHKのニュースを観ていたら、この小林さんがアップで映っており、「あ、小林さんだ!」と思わず声をあげた。
何のニュースだったかというと、小林さんが委員長を務めている「教育問題委員会」が、中等教育、大学、企業への提言を行なったというニュースである。
わずか数十秒のニュースだったのだが、とても気になっていたこともあり、ついさっき、経済同友会のホームページから、その提言の詳細を閲覧した。
提言だけで20数ページに及ぶ、相当に気合の入った内容である。
ただ単に企業人の目線で、「中学・高校・大学の教育はこうあらねばならぬ」というような、第三者的、評論的な内容ではなく、経済界自らが考えなければならないことまで自戒を込めながら言及していたことに感銘を受けた。
特に、企業の採用活動の諸問題については、言い訳することなく、良くないことは良くないこととしてビシッとあげていたことに感動した。
さらには、この問題点を抽出するにあたって、大いに参考にしたであろう議論(パネルディスカッション)の内容を、添付資料として公開している。その内容がまたイケてる。大学のキャリアセンター責任者と、企業の人事担当者とのディスカッションなのだが、どうみても企業側のほうが分が悪い。贔屓目に見たとしても、企業側にはあまり正義がない。それを、企業側の経済同友会がキチッと公開しているところに、僕は感動したのである。
なかでも僕が一番グッときた大学側の発言を、以下貼り付けるので、ぜひこの日記をご覧の方にも読んでいただきたいと思う。また、全文(提言を含めると全42ページ)は、こちらからPDFをダウンロードできるようになっているので、かなりの長文ではあるが、ぜひじっくりと読んでいただきたいと思う。⇒ http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2008/090202a.html
いまでも経済同友会は昔の理念のままに健在である、と、この提言を読んで思った日であった。あっぱれ!
※以下、公開されている討議内容(大学キャリアセンター職員の発言)の抜粋です。
昔、大学生は大人という定義だったが、現在は心理学的にも昔の大学生・大人は今の30 歳か35 歳ぐらいかといわれている。しかしこれは私達が作ってきた社会であり、その軋みをいかに産業界と大学が力を合わせていくかという段階に来ている話でもある。
今の企業の人材採用は、誤解を恐れずに言えば各大学のトップ層の争奪戦ゆえの早期化である。倫理規定に関係ない外資企業等が早期化するから我々もやらざるをえない、とリーディングカンパニーが言う。
なぜ待てないのか。子供達が成長することをなぜ見守れなくなってしまったのか。もっと私達が大人にならなくてはいけないのではないか。学生にとって不幸なことは真に大人のモデルが少なくなったことだ。学生達は、人事、企業のOBを本当に良く観ている。相談時に魅力的な人事の話がまれにでてくる。
高度成長期の人材要件は協調性だった。この部署(筆者注:キャリアセンターのことだと思われる)に戻ってきて、日本の企業から自立という言葉が出てきたことに驚いた。
180 度の人材要件の変化のなかで一番の犠牲者は若者である。求める力としてコミュニケーション能力がトップになり、大学生ならあたり前の能力要件を、なぜ敢えてトップに挙げなければならない日本社会になったのかを、一緒に考えていくことが必要。若者たちを批判し責めても何ら回答はない。
しかし問題の解は若者にしかない。完成した若者だけを選び、峻別する厳選採用は違うのではないか。中間層以下の学生を引き上げるのが教育である。それには時間が必要である。日本の教育システムによって、軋みを一身に背負っている若者たちをどうするかは大きな課題である。
早く内定が決まった学生が、大学の授業料を払いながらも企業の研修もこなしているのが現状。大学は大学生をさせなければならない。早期化により拘束期間が長くなり、企業は必死につなぎ止める努力を強いられる。現実に起こっている事を顕在化させて、全体が共通理解を持った方がよい。
これまでに頂いたコメント
2件コメントがあります
- 本田ポンタ勝裕さん
- くぎさんさん
ポンタさん
コメント、ありがとうございます!マジに行動に移しますかねー。
小林博士も教育問題委員会に入っておられるんですね。ポンタさんの人情的アプローチと、小林博士の科学的アプローチと、パフの協賛企業ネットワークが融合すれば、変化を起こすことができるんじゃないでしょうか。どうです?
あ、そういえば本日、上の発言をされた(と思われる)、某大学の就職部長とお茶を飲んできます。アドバイスをいただいてきますね[E:happy01]。
シビレチャッタ~!
いいですね、この提言。
しかし今日も鳥取の高校生に会ってきましたが、彼らの可能性の大きさは変わらないですよ。
古今東西、その人に可能性を見出せば輝きだす。
それを止めているのはダメな大人なのも古今東西変わりません。
僕らの学生への姿勢は、まっすぐその可能性に向かわなければいけません。
それは人材ビジネス業界の前提だと思うのですが、
それすら忘れている人たちがたくさんいますね。
ありゃ、めずらしくマジメになっちゃった。
照れんねんな~、こういうコメント。
ほな、また!
あ、経済同友会は僕の師匠、FFS理論の小林惠智博士も組しておられます。